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「知的障害者の創作・感性が刺激に」 滋賀の福祉施設で芸術家が交流

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「知的障害者の創作・感性が刺激に」 滋賀の福祉施設で芸術家が交流

 滋賀県東近江市上中野町の障害者福祉施設「きらり庵」で、施設に通う知的障害者と県内の芸術家らが、創作活動を通して交流を続けている。制作に打ち込む障害者の無心の姿が芸術家に新鮮な刺激を与え、障害者側もヒントをもらい制作の幅が広がるなど、相乗効果が生まれている。2月には、交流を通じて生まれた作品の展覧会を共同開催する。

 知的障害者ら約10人が通う同施設では、通所者が絵を描いたり手芸したりと思い思いの創作を楽しんでいる。平成25年7月から、県内で活動する画家や版画家ら6人がほぼ毎週月曜に交代で施設を訪れ、障害者の制作の様子を見学したり、手助けしたりしている。

 ある日の作業場で、通所者がクチナシの枝を手に取って絵を描いていた際、「この枝を切ったから木は死んだんかな。せめて絵で生かしてあげたいな」と言いながら背景の色使いに悩んでいた。これに気付いた画家の吉田友幸さん(31)が思いをじっくり聞き、「白やとクチナシが際立つよ」と助言した。

 吉田さんは「こんな線は自分にはとても描けない、と驚かされることもしばしば。彼らの制作に打ち込む姿勢はとても刺激になる」と交流の効果を口にした。

 障害者の創作活動が近年、正規の教育を受けていない感性のままの芸術「アール・ブリュット」として注目される中、彼らの活動を充実させたいと望む福祉施設関係者は少なくない。

 しかし、職員は芸術分野に疎く、手法に悩むケースが多い。きらり庵では、芸術関係のNPO法人で働いた経験を持つ職員が、個人的なつながりで芸術家らに呼びかけ、今回の交流活動を実現させた。

 芸術家らは、個々の障害者の特徴や性格を観察し、接し方を考えた。絵を描くのが好きな人には、題材となる季節の花を渡したり、今とは別の画材を提案したり。切り絵に打ち込む人には、作業がスムーズに進むよう手順を教えたりした。

 障害者側も、芸術家と接することで創作活動への意欲が湧き、手がける作品に幅が出てきた。

 こうした取り組みの成果を披露しようと、近江八幡市永原町上の「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」で2月4日から、展覧会「月曜日のきらり庵」が開かれる。交流に参加する版画家の野田拓真さん(36)は「これまで福祉施設に出入りする機会はほとんどなかった。一緒に過ごした楽しい時間の形を展示で表現したい」と開催を心待ちにしている。