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松戸市「すぐやる課」 困った市民を助け続けて45年 千葉

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松戸市「すぐやる課」 困った市民を助け続けて45年 千葉

 反応が鈍いお役所仕事の追放を目指し、松戸市に昭和44年に作られた全国初の困りごと即応組織「すぐやる課」が開設45年を迎えた。市民の要望を受けて処理する件数は年間3千件ほどで、累計では14万件を超えた。害獣駆除の急増など45年間で仕事の中身は変化したが、「困っている市民を助ける」精神は不変だ。14代目に当たる小島由紀夫課長(59)ら職員9人は、道路の応急修理やスズメバチの巣撤去に市内を走る。(江田隆一)

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 「すぐやる課」生みの親はドラッグストア「マツモトキヨシ」創業者で、市政改革に取り組んだ当時の松本清市長。「市民の要望がたらい回しにされている」と考えた松本氏は、部署にとらわれず市民の困りごとに対処する「すぐやる課」を昭和44年10月6日に誕生させた。10月4日の設置条例案可決から2日後の開設という「すぐやる課」らしい早業だった。

 課の事務室は現在と同様の市役所旧館2階で、当時は市長室がそばにあった。市職員になる前は自衛官だった行動力から抜擢(ばってき)された初代の臼井銀次郎課長は、対応に迷うと市長室に駆け込んだという。

 最初に寄せられた要望は「子供が熱を出したのに剣道大会に行っている夫と連絡が取れない」というもの。携帯電話のない時代ならではの要望に、臼井課長が夫を探し出したのはいうまでもない。

 松本市長は昭和48年に64歳で、臼井課長も翌年54歳で死去。2人の情熱を忘れないようにと課の壁には「すぐやらなければならないもので すぐやり得るものは すぐにやります」の松本市長の書がかかる。

 ◆SOSで職員急行

 市民からのSOSで職員が急行するスタイルは45年間変わらない。だが仕事の内容は少しずつ変化している。発足当時はU字溝が壊れている、道路に穴があるなど土木・清掃関係が9割。雨が降れば道路に水があふれる人口増にインフラ整備が追いつかない状況が目に浮かぶ。

 当初は「その他」要望に分類されていた、スズメバチの巣除去など動物関係が増えたのは平成5年ごろだ。5年度受理件数は439件、11年度には1千件を突破。現在は土木・清掃とほぼ同数だ。

 ほとんどは「ハチをなんとかしてほしい」の要望だが危険なスズメバチは4分の1ほどだ。蜜蜂などの場合は花の授粉を助ける益虫としての役割や、そっとしておけば危険が少ないことを説明する。

 ハクビシンや特定外来生物のカミツキガメ撤去の要望は専門部署に取り次ぐ。「カラスが危険だ」という要望も多い。子育て中のカラスは気が荒いが法律で駆除はできず、見守って落ち着くのを待つ。アオダイショウも捕獲して離れた場所に放すという。

 ◆なんでもやる?

 開設当初は結婚相談まであったという。「すぐやる」を「なんでもやる」と取り違えている市民はまだ多いという。問題解決のため市民を手伝うのが目的だから「部屋掃除」は断る。一方で「溝に鍵を落とした。蓋が重くて上がらず捜せない」の要望には応える。

 山野春香さん(24)と安孫子裕樹さん(21)は市職員になり最初の配属先が「すぐやる課」という若手だ。市外出身の2人は「松戸市役所で働くならここ」の希望がかなったという。

 「いつも市民の近くで仕事ができてうれしい。他の部署に引き継ぐ仕事も多く、ここでは市の仕事が見渡せる。この経験は将来に生かせる」と山野さん。

 スズメバチの生態研究を欠かさないという安孫子さんは「近所の人に見守られて作業をすることもたびたび。市民の期待と信頼を感じて感激」と話す。

 全国自治体に広がり

 昭和52年には舞台を西東京に置き換えたテレビドラマにもなって注目が集まり、同様の組織が全国300以上の自治体に作られた。リストラや市町村合併のほか「縦割り行政の改善で役割を終えた」と廃止が相次ぎ、松戸市でも廃止論が何度か出たが、そのたびに「すぐやる課は市民を大切にする松戸市政のシンボルだ」の声が高まったという。

 高齢化による新たなニーズで役割が見直され新設の動きもある。お隣の東京都葛飾区では平成22年4月にスタート。名前は違っても「すぐやる課」と同じ趣旨の組織が各地に作られている。「松戸発」の住民サービスは全国で好評だ。

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 ◆すぐやる課の45年間◆

 昭和44年10月6日 職員2人で発足。初日に16件、2日目に44件の要望があったため、9日から3人増員して5人体制に。45年10月までの1年間の処理件数は2702件

   47年3月   「すぐやる課音頭」誕生

   49年12月   「すぐやる課長奮戦記」東京コマ劇場で上演

   52年7月   テレビドラマ「すぐやる一家青春記」放送開始

 平成13年8月23日 処理件数が10万件突破

   21年10月6日 市民会館で40周年記念イベント

   23年12月   「小学校通学路パトロール」開始、危険場所を改善

 ※25年度の処理件数は2810件(土木1016件、清掃237件、動物関係1369件、その他188件)。累計処理件数は14万2189件。