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佐賀知事選めぐり自民県議団真っ二つ

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佐賀知事選めぐり自民県議団真っ二つ

「ガンバロー」と拳を突き上げる候補者と支援者=25日午前、佐賀市(一部画像を加工処理しています)

 佐賀県知事選は「自民分裂」の構図となった。党本部は「改革派市長」と呼ばれた樋渡啓祐氏を推薦したが、自民党の県議の半数や有力支持団体は樋渡氏の政治手法に反発し、元総務官僚の山口祥義氏を推したことで、完全に股裂き状態となった。党本部に地方組織が反旗を翻した形となり、結果次第では船出したばかりの第3次安倍晋三政権に影を落としかねない。(田中一世、奥原慎平)

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 「争点はただ一つ。古川県政を前に進めるのか、ブレーキをかけるのか」

 自民・公明両党の推薦を受ける樋渡氏は25日午前、佐賀市の松原神社で開いた出陣式で、1200人を前にこう強調した。前知事の古川康衆院議員も駆けつけ、「これほど欠点が語られる候補も珍しいが、それをわかった上で応援しよう」と呼びかけた。

 その他の県選出の自民党国会議員も顔をそろえ、古川氏の後継者であり、「自民党候補」であることをアピールした。

 樋渡氏は武雄市長時代、市図書館の運営をレンタル大手「TSUTAYA」の運営会社に委託するなど、大胆な施策を次々に実行に移した。

 安倍晋三首相(自民党総裁)は昨年7月、参院選の応援遊説で武雄市を訪れた際、「図書館はアベノミクスの象徴だ」と持ち上げた。今月22日には、党本部で樋渡氏に推薦証を手渡し、「地方創生の先頭に立ってほしい」と激励した。

 玄海原発再稼働、オスプレイの佐賀空港配備-。安倍政権が抱える大きな課題に、樋渡氏は前向きな姿勢を明確に示す。農協改革についても基本的な認識は共有する。

 同じ保守分裂となった沖縄県知事選に続いて、安全保障問題が争点となる佐賀知事選でも推薦候補が敗れれば、政権へのダメージは避けられない。28日には、菅義偉官房長官が応援入りするなど異例のテコ入れをする。

 自民党佐賀県連の福岡資麿(たかまろ)会長は取材に「推薦したからには落選させられない。総理に『勝利に導くため頑張ってほしい』といわれている」と語る。

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 しかし、選挙戦の実動部隊となる県議の動きは、一枚岩とはいかない。自民党の県議が出席した出陣式は樋渡氏14人、山口氏13人と真っ二つに割れた。こうした山口派は、樋渡氏の政治手法に対し、「強引だ」「議会への説明が足りない」などと反発する。

 自民党の有力支持団体であるJAグループ佐賀の政治団体「佐賀県農政協議会」や、佐賀県有明海漁協も山口氏を推薦する。陣営の総括責任者には秀島敏行・佐賀市長が就任した。

 山口氏が佐賀市の龍造寺八幡宮で開いた出陣式にも、これらの面々を含めた1千人が参加した。

 「リーダーは一人一人の痛みに敏感でなければならない。県民の皆様に寄り添いたい」

 山口氏は、こう決意表明した。出席した土井敏行県議は取材に「(樋渡氏は)トップダウンで政策決定するので、住民・議会の意見が吸い上げられなくなる」と懸念を示す。

 また、農政協の中野吉実会長は「樋渡氏は農業に対して偏見が強い。JA側とのトラブルも絶えない」と批判する。中野氏によると、JAが若手農家組織設立への支援を樋渡氏に依頼したところ、「農家育成は(JAではなく)行政がやる」と断られたという。農政協は、安倍政権が「岩盤規制突破」の象徴として農協改革を進めていることにも反発する。

 さらには、連合佐賀も山口氏支援を表明し、表向きは「自主投票」を決めた民主党県連も実際は応援している。

 現政権との距離の近さを強みに地方創生を訴える樋渡氏と、保革を超えて「反樋渡」の受け皿となった山口氏。さまざまな思惑が交錯する選挙戦は、年をまたいで1月11日に投開票される。