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【年の瀬記者ノート 栃木】(2)館林ストーカー殺人 本当に防げぬ事件だったか

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【年の瀬記者ノート 栃木】
(2)館林ストーカー殺人 本当に防げぬ事件だったか

 本当に助けることはできなかったのだろうか。今も、やりきれない思いが消えない。

 凶器に拳銃が使われたことで衝撃が広がった群馬県館林市のストーカー殺人事件。被害女性の実家と、女性を殺害したとされる元交際相手の男の自宅が栃木県内にあったため取材を始めたが、事件後に自殺した「ストーカー男」の行動は、常軌を逸していた。

 象徴的なのは、事件が起きる直前の1月下旬と2月上旬、被害女性の家族の車から覚醒剤が見つかったことだ。被害女性は、男との接触を避けるために群馬県大泉町に転居、住民票の閲覧制限を申請していた。男は「会いたい」としつこく迫り、金銭を要求するなどトラブルが続いていたという。

 男の指示で覚醒剤を置いたなどとして、覚せい剤取締法違反容疑などで群馬県警に逮捕された男の知人の公判では、覚醒剤を持っていたとして家族が逮捕されれば、面会に来た被害女性を追跡して転居先を割り出せると男が計画していたことが明らかになった。

 実際には、もくろみは外れ、家族は逮捕されなかった。男は執念深く、さらなる手段に出る。家族の車に衛星利用測位システム(GPS)機能付き発信機を取り付け、女性の転居先を特定しようとしたのだ。

 果たして男は、転居先の自宅を突き止めると拳銃を調達、凶行に及んだとみられている。群馬県警は、拳銃を譲り渡したとして暴力団員を逮捕したが、男の自殺もあり十分な証拠が得られず、嫌疑不十分で不起訴処分となった。

 納得できないのは、殺人事件発生までの栃木、群馬両県警の一連の対応だ。男は昨年11月、被害女性への暴行容疑で栃木県警に逮捕され、罰金刑で釈放されたが、別れ話に納得せずにストーカー行為をしていたとして文書で警告を受けていた。

 女性が群馬県に転居した後、両県警はどこまで情報を共有していたのか。「女性とは定期的に連絡を取り合っており、特に危険だとは感じなかった」(捜査幹部)というが、少なくとも覚醒剤が見つかった時点で警戒を強化できなかったのだろうか。

 被害女性は3歳の娘がおり、栃木県内や群馬県内の飲食店で働いていた。生きていくために、生活の拠点から遠く離れた場所に移り住むことはできないという事情もあっただろう。一般市民がトラブルに巻き込まれた際、頼れるのは警察しかない。そのことを関係者には肝に銘じてほしい。(原川真太郎)

                   ◇

【用語解説】館林ストーカー殺人事件

 群馬県館林市で2月19日、女性=当時(26)=が銃で撃たれて殺害されているのが見つかった。女性は元交際相手の男=同(39)=のストーカー被害から逃れるために転居しており、事件2日後、男が鹿沼市の車内で拳銃自殺しているのが発見された。男は知人を使って女性の家族の車に衛星利用測位システム(GPS)機能付き発信機を取り付けて女性の居場所を特定したとみられる。