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【電力危機は続く】「反原発」はね返した決断 薩摩川内市議会が陳情採択

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【電力危機は続く】
「反原発」はね返した決断 薩摩川内市議会が陳情採択

川内原発の再稼働を求める陳情を採択した薩摩川内市議会の特別委員会=20日午前(奥原慎平撮影)

 鹿児島県薩摩川内市議会が20日、川内原発対策調査特別委員会(10人)を開き、九州電力川内原発の再稼働に同意する陳情を採択した。再稼働1番手として、全国から集結する「反原発派」の圧力をはね返し、大きな一歩を踏み出したといえる。後は鹿児島県議会と知事の同意が必要となる。ただ、所管する小渕優子経済産業相辞任の影響もあり、具体的な再稼働時期は見通せないまま、冬を迎えようとしている。(津田大資、奥原慎平)

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 「ひとまずほっとしましたが、まだ、再稼働に向けステップを踏んだに過ぎません。今後も粛々と再稼働に向けて地元経済界の意見をまとめていきたい」

 川内商工会議所の山元浩義会頭は、特別委員会の陳情採択に、こう感想を語った。

 川内原発は平成23年9月に2号機が定期検査に入って以来、丸3年間、停止が続く。

 民宿を営む男性(74)が「私らは原発の補修点検などで来る作業員向けに営業しているので、再稼働できなければ店をたたまざるを得ません」と語るように、地元経済の先行きに暗雲が立ち込めた。

 光が射し込んだのは、今年3月だった。再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査で、川内1、2号機が「優先枠」に入り、再稼働1番手が有力となった。

 審査進展と軌を一にするように、商工会議所や薩摩川内市ホテル旅館組合などで作る市原子力推進期成会が3月18日、早期再稼働を求める陳情書を提出した。陳情書の文言には「川内原発が運転を停止したことで、建設・電気業関係者、サービス業など全ての業種に売上減少などの影響が拡大する」と悲痛な思いが滲む。

 一方、反原発派は全国から鹿児島県に集結した。強引ともいえる署名集めなど、活動は過激化した。

 この日の薩摩川内市議会にも、反対派約60人が集まった。人数制限で、別室での傍聴を命じられた約30人は、市職員に罵声を浴びせ、委員会室のドアや壁を叩き続けるなど、傍若無人の振る舞いを続けた。

 「地元の人は賛成の人ばかりなのに、反対の活動家が押し寄せ『市民の声を聞け』と拡声器で怒鳴り立てる。こっちの方言ではないので、県外から来ているのでしょう。地元のマスコミは県外の活動家の声ばかり報道して、私たち市民の声は報じないんですよ」

 市内で喫茶店を営む30代の女性は、反原発派とマスコミの態度に憤った。

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 こうした逆風をはね返し、薩摩川内市議会は、再稼働を求めることを決断した。

 九州の経済界からも歓迎の声が上がった。九州経済同友会の石原進代表委員(JR九州相談役)は「再稼働に同意する陳情を賛成多数で採択したことは、さらに一歩前進したものであり、歓迎したい。今後は薩摩川内市議会の本会議、鹿児島県議会においても同意決議が早期に行われるよう期待したい」とコメントした。

 玄海原発3、4号機の地元、佐賀県玄海町の岸本英雄町長も「川内原発の地元では、再稼働への理解を進める努力をされたんだと思う。玄海原発の再稼働を目指す玄海町にとっても、明るい話であり、期待しています。玄海町議会や町民には、再稼働の重要性を十分に理解していただいており、後は佐賀県議会で十分に議論がなされれば、県民も納得するだろう」と語った。

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 今後、薩摩川内市議会は28日に臨時本議会を開いて陳情を採択し、岩切秀雄市長が正式に同意を表明する見通しだ。

 鹿児島県議会は27~28日に原子力安全対策等特別委員会を開き、原子力規制庁などの担当者を呼び、再稼働をめぐる陳情を採択する。この論議を経て、伊藤祐一郎知事も再稼働容認の態度を鮮明にするとみられる。

 その後、規制委が電気事業法に基づく「使用前検査」を進める。これまでに経験がないだけに「どれだけ時間を要するかわからない」(九電)とするが、年内中にも終了するとみられる。

 早期再稼働への懸念材料は、小渕氏の辞任だ。鹿児島県議会の池畑憲一議長は今月15日、小渕氏に再稼働に向けた鹿児島入りを要請し、小渕氏も快諾した。再稼働への国の責任を明確にし、弾みをつける狙いだった。

 だが、こうしている間にも、原発ゼロによる九州の電力危機は深刻さを増している。九電と同様に経営が厳しい北海道電力は再値上げに踏み切らざるを得なくなり、今月15日、家庭用で15・33%の値上げ率で決着した。

 腰折れが懸念される景気回復を続けるためにも、再稼働への手続きをこれ以上停滞させてはならない。