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長年の“悲願”「羽田連絡道路」具体化 川崎市「歓迎」も課題山積

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長年の“悲願”「羽田連絡道路」具体化 川崎市「歓迎」も課題山積

 東京都大田区の羽田空港と多摩川対岸の川崎市を橋で結ぶ「羽田連絡道路」の具体化に向けて、国や関係自治体が動き出した。県や同市は羽田空港の国際化に伴う人やモノの流れを県内に取り込む絶好の機会ととらえるが、環境への影響や地元住民への説明など課題も山積している。(古川有希)

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 先月8日、国と県、同市や大田区などで構成される「羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会」の初会合が都内で開かれ、羽田空港と同市殿町地区を直結する連絡橋の整備実現に向けて具体策を検討していく方向性が確認された。

 川崎市の福田紀彦市長が「本市の長年の懸案だった羽田連絡道路の整備の実現に向けて合意が図られたことを歓迎する」とコメントしたように、連絡道路は同市の長年の“悲願”だった。

 羽田連絡道路の整備は、10年以上前に「神奈川口構想」として浮上。もともとは羽田空港の再拡張・国際化を京浜臨海部や県経済の活性化につなげることを目的としていたが、区内の交通事情に悪影響が出ることを懸念した大田区などからの慎重な意見もあり、進展しなかった。

 そんな中、羽田空港は国際化が進み、同市殿町地区もライフサイエンス(生命科学)や先端医療分野の一大研究開発拠点として整備され、平成23年には国際戦略総合特区の指定を受けた。

 ◆五輪へ“待ったなし”

 当初の前提条件が失われ、宙に浮きかけた同構想が再び見直されるきっかけになったのは、2020(平成32)年の東京五輪・パラリンピック開催の決定だった。国は東京五輪前に連絡道路の供用開始を目指すほか、市や市商工会議所も7月、「東京五輪を視野に入れた交通機能の強化に取り組むことが必要」とした要望書を太田昭宏国土交通相宛てに提出した。

 もっとも、五輪開催まで6年を切る中で、「時間的ロスをする余裕はもうない」(同市総合企画局)状況だ。

 新橋への架け替えのため単純比較はできないが、多摩川にかかる大師橋は18年の竣工(しゅんこう)までに16年を要したといい、「羽田連絡道路」を五輪に間に合わせるには“ウルトラC”が必要となりそうだ。

 ◆「優先すべきことある」

 一方、同市殿町地区で工場を経営する男性が「橋を造る前にスーパー(高規格)堤防の整備など優先すべきこともある」と話すように、“お膝元”からも異論が上がるほか、自然環境保護の観点から、整備に反対する声もある。

 「日本野鳥の会神奈川支部」は7月、黒岩祐治知事や福田市長宛てに羽田連絡道路の橋梁(きょうりょう)案に反対する要望書を提出した。石井隆副支部長(53)は「橋やトンネルを造ることは多摩川河口の自然環境に大きな影響を与える」と訴え、「(橋やトンネルの)ルートや構造が決まるまでに県や市と環境に関して協議していきたい」と話す。

 浜銀総合研究所(横浜市西区)の新滝健一主任研究員は「羽田と川崎をつなげることに関心が集中しているが、橋は道路の一部。どの道路につなげるのかが大きな問題だ。(橋が)つながった後も、経済効果が出てくるのには時間がかかるだろう」と指摘している。