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【記者のイチ押し】横浜の「ブックアパート」 本と人をつなぐ懸け橋

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【記者のイチ押し】
横浜の「ブックアパート」 本と人をつなぐ懸け橋

 本屋とカフェを併設するなど一般書店と差別化を図り、魅力を高めた新しいタイプの書店が増えている。こうした“新型書店”の多くは都内に集中するが、そのひとつが県内にもある。横浜市港北区の集合住宅地の一角に店を構える「BOOK APART」だ。

 差し込む陽光が模様を作るベッドの上には、色とりどりの絵本。キッチンに並ぶ食エッセー。書斎には天井までぎっしり詰まった小説や哲学書-。

 「本が好きな人の家に来た感じで見てほしい」。こう語るのは、経営者の三田修平さん(32)。「家」という呼び方がよく似合う店内では、ソファに腰を下ろしながら気ままに本を楽しめる。本は全て三田さんによるセレクトで、その多くが古本だ。

 三田さんは書店員を経て、セレクトショップなどで本の仕入れを担当してきた“本選び”の専門家だが、大学に入るまではあまり本には親しんでこなかったという。

 大学の勉強を通じ本の楽しさに目覚めた大学1年生のとき、米中枢同時テロと父親の死に直面。三田さんは、「それまでの価値観が揺らぎ、自分はこのままでいいのか」と悩み始めた。その中で、「本は多様な価値観に気付く手助けになる」と感じたという。

 「本に感じる面倒くささや分かりにくさを自分自身がよく分かるからこそ、本の楽しさを知らない人と本との懸け橋になれるのでは」と考え、「本の道」を歩み始めた。

 三田さんは本と客を「磁石のよう」と表現する。離れすぎていると引き合わない、しかし、程よい距離なら新しい発見ができる。ベストセラーが中心になりがちの一般の本屋では見つけにくい本と出会え、今まで本に興味がなかった人も楽しめる場所を作りたい…。

 そうした思いの中、三田さんがまず始めたのは「BOOK TRUCK」と名付けた試み。トラックに本を詰め込み、「本屋の方からお客さんの方へ出向く」(三田さん)という移動式本屋だった。その後、「BOOK TRUCK」活動の拠点として、「生活に溶けこんだ中で本をディスプレーできる店」を模索していたとき、偶然現在の物件に巡り会い、開店を決意した。

 「移動式本屋のときも、ちょうど良いトラックをたまたま見付けて、じゃあやろうと思った」。偶然の出会いを逃さない。そんな三田さんが作る空間は、本との新しい出会いに満ちあふれている。

 「BOOK APART」は横浜市港北区大倉山3の5の11大倉山集合住宅I号室。月曜定休。営業時間は正午~午後7時。詳細は、店のフェイスブック(https://www.facebook.com/mybookapart)。(岩崎雅子)