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丹下建築の体育館は香川の誇り 閉館惜しみ保存よびかけ

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丹下建築の体育館は香川の誇り 閉館惜しみ保存よびかけ

 香川県立体育館(高松市福岡町)が先月30日、50年の歴史に幕を下ろした。同日夕、閉館を惜しむ近隣の住民や建築家のグループなど、約20人がホワイエ(休憩室)に集まり、これまでの思い出や保存への希望などを語り合った。

 同体育館は、丹下健三が手がけた珍しい船型の建物として県の観光スポットにもなっているが、老朽化による耐震補強に約10億円の費用がかかり、入札も成立しなかったことから、閉館を余儀なくされた。

 県が閉館を決定した7月、「香川県立体育館保存の会」が始動。同会の建築士、カワニシノリユキさん(36)=高松市=が、フェイスブックやツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使って体育館の保存を呼びかけたところ、9月末までに約1780件のフォローがあったという。

 体育館のホワイエなどでは、カワニシさんが館内の説明会を開いた。コンクリートの壁に直接ガラスをはめ込んだ設計や、三次元曲面の階段の手すりなど、随所に工夫が施されていることを知った参加者からは「こんなすばらしい建築物はもう2度と建てられない」との声が上がった。

 中学のころからバレーボールの試合で利用していた高松市の建築士、吉井千恵子さん(50)は「私にとってここは“スポーツの聖地”。体育館として活用できないなら、病院のリハビリ施設やカフェなどに活用してほしい」と語った。

 カワニシさんは「体育館を壊さないでほしい。閉館前にプロカメラマンに隅々まで撮影してもらったので、写真展を開くなどして保存を広く呼びかけていきたい」と話した。

 ◆国内外の研究者ら視察

 近代建築の保存活動などを展開する国際的学術組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」インターナショナルのアナ・トストエス会長ら国内外の建築研究者らが、日本を代表する建築家、丹下健三(1913~2005年)設計の香川県庁舎東館を視察した。トストエス会長は「香川のシンボルであるだけでなく、世界にとっての遺産」との印象を語った。

 DOCOMOMOの世界大会が韓国で開かれたのを機に日本ツアーを実施。ポルトガル、カンボジア、日本など9カ国の約30人が参加した。DOCOMOMOジャパンは「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」作品としてこれまでに174件選定しており県内では県庁舎東館、瀬戸内海歴史民俗資料館など4件。県庁舎東館は最初に選定した20件のうちで唯一の庁舎建築だった。

 昭和期の洋画家、猪熊弦一郎が手がけた陶板壁画「和敬清寂」がある1階ロビー、瀬戸内海と讃岐の山の雰囲気を表した南庭で、県職員から「市民に開放される形になった日本で最初の庁舎」、柱と梁(はり)については「日本の伝統的な木造建築の良さを表している」などと説明を受けた。

 このあと、浜田恵造知事を訪問。浜田知事は、県庁舎東館などの建築群を「“アート県かがわ”のシンボルで、世界に誇れる地域資産」と話し、魅力の世界発信を期待した。

 トストエス会長は「この建物は、深い日本の芸術をモダンの中に築いていくことに大変すばらしく成功した作品」と強調。耐震工法が検討されていることについては「地震対策は、世界の国々にとっても必要な技術。その技術を世界の人たちのためにも示していただければ」と述べた。一行は、先月30日で閉館となった丹下健三設計の県立体育館なども視察した。