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今年度で監察医制度廃止「承諾解剖」へ 国主導の人材育成カギ 神奈川

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今年度で監察医制度廃止「承諾解剖」へ 国主導の人材育成カギ 神奈川

 死因が不明で、かつ犯罪に巻き込まれた疑いの低い遺体を医師が解剖する行政解剖。県内では横浜市のみが監察医による解剖を行ってきたが、県は今年度末でこの監察医制度の運用を廃止する方針を固めた。廃止後は他の県内32市町村と同様、遺族の承諾の下で解剖医が執刀する「承諾解剖」に移行する。

 監察医制度は戦後間もなく、伝染病や栄養失調で死者が相次ぎ、死因究明による公衆衛生向上の目的で導入。同制度に基づく解剖では、遺族の承諾が必要ない。

 とはいえ、近年では同制度は「時代にそぐわなくなっている」と黒岩祐治知事は指摘する。同制度に基づく解剖であっても、身元不明を除くほぼ全てのケースで遺族の承諾を取っており、「実運用としては承諾解剖と変わらない」(県医療課)のが実態だ。

 さらに昨年4月、遺族の承諾がなくても、警察署長の判断で解剖できることを規定した「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」(死因調査法)が施行されたことから、県監察医委員会は「廃止しても差し支えない」と結論付けた。

 監察医制度は現在、5都市(東京23区、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市)で実施されている。東京23区では常勤医を持つ都監察医務院(文京区)が設置されているのに対し、横浜市では4人の医師に監察医を委嘱するという形を取っており、財政上の理由から医師に対する報酬もない。

 また、解剖に要する費用(約8万円)についても、遺族負担と公費負担の自治体があり、横浜市では遺族負担だ。このように、自治体ごとに運用方法は大きく異なる。

 横浜市では昨年、1402体に対し監察医制度に基づく解剖が行われた。そのうち1398体を横浜市の60代の男性監察医が一人で担当。小林大介県議(みんな)は11日の県議会本会議の代表質問で「個人の負担に大きく依拠している脆弱な体制」と指摘した。

 県医療課の担当者は、「承諾解剖は県内の4つの医科大学の先生などに対応していただいており、今後解剖が分散されることになれば」と期待を寄せる。

 また、黒岩知事は今後の体制について「全国的に死因究明に関する人材が不足している。国が中心となって解剖医の確保・育成をすべきものと認識している」と指摘。その上で、解剖せずに遺体の表面などから死因を調べる検案に絡み、「かかりつけ医をはじめとする地域の医師に、必要に応じて検案に携わっていただく体制づくりに取り組む」と述べた。

 突然の死別に、大切な人の死因を知りたいと解剖を希望する遺族もいるという。遺体を一刻も早く帰してほしいという遺族の声も切実だ。

 事件性の有無を判断するため、死因不明の遺体や遺族と接し続ける県警の捜査幹部は「お亡くなりになった方をなるべく早くご遺族の元に帰してあげたい。犯罪捜査という視点から考えると(監察医制度廃止の)影響はあまりないと思うが、今まで以上にしっかりとご遺体をみて事件性の有無を判断していきたい」と実直に話した。(小林佳恵)