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最短2時間で入れ歯複製 豊中の民間歯科医院がデータセンター 大阪

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最短2時間で入れ歯複製 豊中の民間歯科医院がデータセンター 大阪

 入れ歯治療などを専門とする大阪府豊中市の民間歯科医院「大前歯科医院」が、入れ歯のデータを収集・管理する「入れ歯データセンター」を設立した。データを登録すれば、災害などで入れ歯をなくした場合、来院しなくても最短約2時間で入れ歯を作ることができる。災害時に入れ歯を忘れたりして避難所で困る人は少なくない。民間歯科では珍しい試みといい、大前太美雄院長(46)は「総入れ歯をなくすと、物が食べられず、会話もできなくなる。気持ちも大きく沈んでしまう。万一の備えに使ってほしい」としている。(池田美緒)

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 大前院長は平成12年ごろから、入れ歯専門医として診療。歯科技工士を院内に常駐させ、素早く精度の高い入れ歯作りをめざしている。東日本大震災以降、患者から「もし入れ歯を外したまま避難したらどうしよう」などと相談されるようになり、データを保管するサービスを開始。好評だったため、同院の患者以外にも対応することにした。

 データセンターの対象は総入れ歯。入れ歯を型どりした模型と、上下のあごの形と位置関係の記録、かみ合わせの記録を集めて管理する。模型に樹脂を流し込むなどすれば、わざわざ来院しなくても、最短2時間で愛用していた入れ歯の複製ができる。

 注文を受けて医院で入れ歯を作製、利用者が取りに来られない場合は最寄りの歯科医院や避難所に送る。登録料は3万円で、保管料が月500円。紛失した入れ歯を作り直すことや型どりをせずに入れ歯を作ることは保険診療の対象にならないため自由診療となり、実際に入れ歯を作る際に約20万円かかる。データは今後、3Dスキャンするなどしてデジタル化することも検討している。

 技工士が常駐していない一般的な歯科医院で入れ歯を作るには、診察や調整のため5回ほど通院せねばならず、1~2カ月かかる。阪神大震災や東日本大震災のように地域全体が被災すると、かかりつけ医が閉院してしまうケースもある。

 災害時の歯科医療に詳しい東京医科歯科大学顎顔面外科学分野、中久木康一助教(口腔(こうくう)外科)によると、阪神大震災や東日本大震災では、歯科を受診した人の2~3割が入れ歯関連の相談だった。発生直後に起こりやすい問題で、総入れ歯を失った人には、ボランティアの歯科医らが仮入れ歯を作るなどして対応した。ただ、完成まで約1週間かかり、応急的な物なので1カ月程度しか使えなかったり付け心地が悪かったりと課題も多い。「被災者全体から見ればわずかな需要だが、入れ歯の人にとっては大変喜ばれるサービスだろう」と期待を寄せている。