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【みちのく昔話 伝説を訪ねて】赤ベコ(福島・会津地方)

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【みちのく昔話 伝説を訪ねて】
赤ベコ(福島・会津地方)

 ■口承文芸 味わい深い語りべ

 「その赤ベコは体がお~きくてな、大きな材木を引っ張って坂道を上って最後まで一生懸命働いたんだど」

 福島県の猪苗代湖は、磐梯山の南麓にある。国内で4番目の広さを誇る。

 その湖畔にある猪苗代町の「会津民俗館」で、会津かたりべ会の佐藤恒子さん(80)が会津地方の民話「赤ベコ」の話を観光客に語っていた。赤ベコとは牛(ベコ)の形をした張り子人形だ。

 会津地方では魔よけや福を招く郷土玩具として、一家に一つはあるほど親しまれている。

 「語りべさんの中で、赤ベコの話ができるのは恒子さんしかいないんですよ」。民俗館の理事長、渡部認さん(56)がそう話した。

 赤ベコの由来は諸説ある。大同(だいどう)2(807)年、徳一大師といわれる僧侶が福島県柳津(やないづ)町の福満虚空蔵(ふくまんこくうぞう)堂を建立する際に、重い材料などを黙々と運ぶ赤い牛がおり、完成前夜に石になって寺院の守り神になったという。

 その赤ベコの供養のために張り子人形が作られ、会津地方に天然痘がはやった際に赤ベコの張り子人形を持っていた子供たちは病気にかからなかったと言い伝えられている。

 赤ベコの体には斑点のようなものがあり、痘を表しているという。

 また、会津地方で起きた大地震の際に虚空蔵堂の再建に赤ベコが活躍したという話もある。恒子さんは「子供の魔よけとしては知られていましたけど、詳しい由来を分かっている人はいなかったので、一から調べたんですよ」と話す。

 20年ほど前から語りべをしている恒子さんは「子供の守り神」として親しまれてきた赤ベコの話を多くの人に知ってもらおうと、柳津町の虚空蔵堂で由来を教えてもらったり、自ら調べて赤ベコの物語をまとめて語り継いだりしている。

 会津地方では渡部さんの父、つとむさんを中心に民話の語りが盛んに行われている。

 恒子さんの団体など会津地方には17団体、208人が語り部として活動している。広く語り継がれている民話もあれば、赤ベコの話をできるのが恒子さんしかいないようにそれぞれの語りべが独自性を持って活動している。

 渡部さんは「語りべさんの語り口によって同じ物語も全然違うように聞こえることもあります。口承文芸ですから資料などもあまり残っていないので今は映像に残そうとういう動きがありますね」と話す。

 こうした民話や張り子人形として親しまれてきた赤ベコが最近ではゆるキャラとしても浸透している。会津地方のマスコット「あかべぇ」として観光案内のパンフレットなどで紹介され、ほかのゆるキャラと協力したグッズなども作られた。

 会津地方だけではなく、福島県のマスコットキャラとして広く知られるようになった。

 恒子さんは「一生懸命働いて虚空蔵さんにあやかりたいという思いが赤ベコには込められているんですね。これからも赤ベコの物語をたくさんの人に知ってもらえるよう語っていきたいです」と笑顔で話した。(大渡美咲)=随時掲載

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 【メモ】「会津民俗館」(福島県猪苗代町三ツ和前田33の1)では、和紙で作った赤ベコの張り子人形の絵付け体験ができる。和紙を使った昔ながらの本格的な製法の張り子の絵付けは他ではなかなか体験できないという。