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全国型ICカード“空白県”解消 宮崎にスゴカ導入へ

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全国型ICカード“空白県”解消 宮崎にスゴカ導入へ

 宮崎県で来年、JR九州と宮崎交通が、全国の鉄道・バス事業者と相互利用可能なICカードを、それぞれ発行する。宮崎は九州で唯一、全国型ICカードが使えない“空白県”だった。全国型ICカードは、1枚あれば全国各地の列車・バスに乗れ、買い物にも使える。こうした利便性が認知される中で、地方の交通事業者は、「バスに乗り遅れるな」とばかりに導入に踏み切っている。(大森貴弘)

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 「お客さまの利便性を考え、宮崎県でスゴカを使えるようにします。多額の費用がかかりますが、有人改札を自動改札にするなど、コスト削減の努力で補いたい」

 JR九州の青柳俊彦社長は8月の定例記者会見でこう述べ、宮崎県で同社が発行するICカード「スゴカ」を導入することを明らかにした。平成27年秋以降、宮崎駅や宮崎空港駅など宮崎市内中心部の12駅に、スゴカが利用できる自動改札や簡易型読み取り機を設置する。

 投資総額は3億円にのぼるという。

 宮崎県は現在、全国型ICカードが利用できないカード空白県の一つだ。福岡や東京から宮崎を訪れたビジネスマンが、カード片手に改札で立ち往生する-。こんな光景もよく見られる。空白県は宮崎をはじめ、愛媛や島根、青森など計12県ある。

 実は宮崎にもICカードはある。宮崎市内を中心に路線バスを展開する宮崎交通はICカード「宮交パスカ」を導入している。

 ただ、宮交パスカは、他社との相互利用はできない。この“ガラパゴス状態”を脱しようと、宮崎交通はパスカの機器更新時期である平成27年度に合わせて、自社規格から全国型カードである西日本鉄道グループの「ニモカ」へ切り替えることを決めた。

 この動きにJR九州も反応した。「バスが使える以上、乗り換え先の列車が使えないというわけにはいかない」(青柳社長)として、スゴカ導入に踏み切った。

 ◆進む共通化

 交通事業者が発行するICカードは、平成12年ごろから広がった。

 当初、各社は独自規格を導入し、カードの相互利用は出来なかった。

 群雄割拠状態のICカードに昨年3月、一大変化が訪れた。全国の鉄道・バス148社が協力し、発行する10種類のカードの相互利用が可能となった。全国型ICカードの誕生だ。九州では西鉄のニモカやJR九州のスゴカ、福岡市営地下鉄の「はやかけん」が全国で使えるようになった。

 この共通化の波に乗らず、全国相互利用が出来ない地域限定のICカードは、現在、九州に5種類ある。

 中小の交通事業者が多く、共通システム導入の投資に二の足を踏んでいることや、各事業者にシステムを提供する電機メーカーが、牙城を死守しようと交通事業者にサービス合戦を仕掛けていることが理由だという。

 それでも、地域限定ICカードを、全国型に切り替える動きは徐々に現れている。

 宮崎交通がニモカ導入を決め、今年3月に熊本市電がニモカ方式の「でんでんニモカ」に切り替えた。長崎バスなど長崎県内の7事業者も、地域限定型の「長崎スマートカード」の全国型移行の検討を始めた。

 また、西鉄子会社の筑豊電鉄(福岡県中間市)は、新型車両購入に合わせて平成27年3月にニモカを導入する。車両購入費も含めた投資額は総額17億円。北九州、中間、直方の沿線3市が補助する。

 ◆国も旗振る

 こうした交通事業者の動きを、国土交通省も後押しする。

 国交省は8月、交通政策基本計画の中間取りまとめ案で、全国型ICカードの空白県について、東京五輪が開催される2020年度までに解消を目指す方針を掲げた。宮崎が空白県を脱することで、九州は全国に先駆けて空白県解消を達成することになる。

 中間取りまとめ案では「交通系ICカードの事業者間での共通利用やエリア間での相互利用の推進策を検討する」と記した。

 全国型ICカードが普及したとしても、鉄道・バスの利用者が急増することはない。

 ただ、交通事業者はコンビニやスーパーなどを展開しているケースが多い。こうした店舗でカードが使えるようになれば、利便性が増し、将来的な顧客増につながる。ICカードに蓄積した乗降や買い物などのいわゆる「ビッグデータ」を、商品仕入れやダイヤ編成に活用しようという取り組みも始まっている。

 西鉄グループで、ニモカを発行する株式会社ニモカの荒瀬聡営業部長は「もはや全国型ICカードは、交通事業者にとって、必要最低限のインフラといえるまでになった。今後も、バス会社などが全国型ICカードに切り替える動きは相次ぐと思います」と語った。