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博多に丸井進出 第6次“流通戦争”か

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博多に丸井進出 第6次“流通戦争”か

 「九州での知名度は低いが、多くのお客さまの意見を聞き、ファンを作っていきたい。福岡市は人口が増えており、非常に有望なマーケットだと考えている」

 博多駅前に出店する丸井の西野淳・博多開店準備室店長は3日、福岡商工会議所(福岡市博多区)で開いた記者会見で、「福岡市場」への期待を熱く語った。

 丸井グループ(東京)は首都圏を中心に約30のファッションビルを展開し、抜群の集客力を誇る。

 丸井に限らず、福岡では県外大手の新規出店や店舗拡大が相次ぐ。西野氏が言う通り、国内でも珍しく若者人口が増加する「福岡市場」を狙った攻勢だ。福岡市の人口は現在151万6千人。年1万人増と、全国20の政令市で最もハイペースで人口が増えている。

 九州外からの大手小売りによる攻勢の象徴が、平成23年3月に開業した駅ビル「JR博多シティ」だった。生活雑貨大手「東急ハンズ」と、大阪を拠点とする「阪急百貨店」がテナントとして参入し、ビジネス街だった博多駅周辺地区のイメージを塗り替えた。

 東京・渋谷に拠点を置くパルコも博多シティ開業前年の22年、天神地区に「福岡パルコ」を開店した。

 パルコは隣接する土地・建物を265億円で取得し、今秋に新館(地上6階地下3階)を開業する。さらに、本館の増床にも着手。27年春に売り場面積の合計は、現在の約1万2500平方メートルから2万平方メートル超に増える。

 丸井とパルコという国内を代表する商業施設プレーヤーによる福岡へのテコ入れ。こうした大型店舗の動きに、天神の商業開発を長年リードしてきた地場大手も負けていない。

 西日本鉄道は運営する商業施設「ソラリアプラザ」に約60億円を投じ、平成元年の開業以来最大の改装を進める。完成予定は来春。西鉄の倉富純男社長は「天神は西鉄グループの最重要拠点。小売り施設とオフィスビル整備を同時に進め、(もっと大勢の人が)天神で働き、天神で買い物してもらえる環境にしたい」と強調する。

 西鉄は現在、天神を東西に貫き、オフィスビルが軒を連ねる「明治通り」の再開発プロジェクトを主導するなど、迎え撃つ準備を着々と進める。

 九州内外の資本による競争激化が何をもたらすのか。福岡中心部は過去5回、東急ハンズなど大規模な商業施設の進出があり、「小売り戦争」「流通戦争」と称された。

 この5回の競争が相乗効果を生んだ。福岡では商業集積によって街の魅力を高め、集客力を増し、さらに商業施設が進出するという施設同士の「ウイン・ウイン」の関係を築いた。

 実際、JR博多シティが開業した23年の市外から福岡市を訪れた客数は1678万人で、22年から2%増加した。24年は1740万人とさらに増えた。今のところ「オーバーストア」(店舗過剰)の懸念を吹き飛ばしたといえる。一方で、福岡都市圏の外側では小売り衰退が進んだ。

 大手資本参入で間もなく勃発する福岡の第6次小売り戦争。商業施設関係者の多くは「天神だ、博多だと小さな争いをするのではなく、福岡市全体で魅力を高め、共存共栄していきたい」と語る。

 とはいえ、福岡の1・5倍の人口を擁する名古屋市では、名古屋駅周辺でJRセントラルタワーズなどの商業施設の建設が相次ぎ、戦前から商業の中心地だった栄地区の人通りが減少したとされる。

 九州経済調査協会の小柳真二研究員は「福岡に目を付け、進出を考える県外の大手企業は少なくない。福岡市民だけではやがて、オーバーストアになる。市外から客を呼び寄せる仕掛けがより求められる」と指摘した。

 地場の老舗百貨店「岩田屋本店」を天神で運営する岩田屋三越の中込俊彦社長は「似たような店ばかりが並ぶなら淘汰(とうた)されていく」と、商業施設の創意工夫の重要性を強調した。(田中一世)

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【福岡の小売り戦争の歴史】(=は開業した施設名)

 ・第1次(昭和46~51年)=ダイエーショッパーズ、博多大丸(移転)、天神コア、天神地下街

 ・第2次(平成元年)=ソラリアプラザ、イムズ

 ・第3次(平成8~11年)=キャナルシティ博多、福岡三越、大丸エルガーラ、ソラリアステージ、博多リバレイン

 ・第4次(平成16~19年)=岩田屋新館、天神地下街延伸、天神ロフト

 ・第5次(平成22~23年)=福岡パルコ、JR博多シティ(博多阪急、東急ハンズ)、キャナルシティ博多イーストビル