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【東北トップインタビュー】木の屋石巻水産 木村長努(ながと)社長(61)

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【東北トップインタビュー】
木の屋石巻水産 木村長努(ながと)社長(61)

 昭和32年に創業し、鯨の缶詰の生産などを手がける。順調に業績を伸ばしていたが、東日本大震災で被災。現在は生産再開までこぎつけたが、業績は全盛期の半分程度に落ち込んでいる。それでも「現状は厳しいが、これからが大切」と前を向く。

 震災で宮城県石巻市の工場・事務所は全壊し、会社の存続も危ぶまれる状況になった。しかし、「社員あっての企業。雇用を確保しなければ」という思いから、他社工場での商品生産を決断した。「利益は度外視だった」と振り返る。

 つらいときに助けられたのは多くの固定客だ。創業以来変わらぬ味を愛するファンから激励のメッセージを受け取った。そうした声を追い風に、工場を再建。現在の商品の種類は、震災前の4分の1程度だが、徐々に戻りつつある。

 震災は悪いことばかりではなかった。意外な形で好転したこともある。

 これまで若い人材の不足は深刻な問題で、中国などの実習生を労働力として雇うことが多かった。しかし、震災後は地元の若者の就職が増えているという。「外国人でも日本人でも人件費は変わらない。それならば地元の人に働いてほしい」

 若い社員が働く姿は、高齢化が進んでいた職場に新しい風を入れた。「若い人が頑張っていると、こっちも刺激になる」と相乗効果を語る。

 今後は若年層の社員を継続的に確保することが課題だ。「一過性ではなく、若い社員が増えるサイクルを作ることが大切。魅力ある企業に育てたい」。笑顔で将来の展望を語った。(木下慧人)

 ■木の屋石巻水産 宮城県石巻市魚町1の11の4。従業員約70人。各種缶詰の製造卸販売を手がけ、鯨の大和煮は昭和32年の創業以来、伝統の味を受け継ぐ。震災で被災したが、同市と美里町に工場を再建し、震災前の姿を取り戻しつつある。近くサバ、サンマの缶詰の出荷が開始される。