山形発 市をキャンバスに見たてた芸術祭 まち歩きで出合う作品群

ZOOM東北
踊る人、座る人など、自分の部屋で思い思いに過ごす「夜子」の動きが作品になる

 山形市をキャンバスに見たて、「山(山形)」をコンセプトにアーティストと市民がつくる「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018」が始まった。最先端技術のプロジェクションマッピングを使ったアートがある一方、県内で埋もれた仏像に光を当てた展示もある。そんな作品を歩いて見て回る芸術祭にまちも活気づいてきている。(柏崎幸三)

 ◆テーマは「山のような」

 「シネマ通り」の名も残る山形市中心部の七日町。かつて映画館が6館あったが県庁移転後、人影はまばらに。芸術祭はそんなまちを活気づけている。美術館で鑑賞するのもよいが、まちを歩いて作品に出合うのもいい。そんな楽しみ方ができる。

 3回目となる今回のテーマは「山のような」。芸術監督の絵本作家、荒井良二さんの絵本「山のヨーナ」(今秋発売予定)から取られた。参加アーティストは、このテーマと距離感を取りながら作品をつくる。

 テーマを具現化したのが西山杉でつくった「さんもん」。旧県庁の文翔館前にいけばすぐに目に飛び込んでくる。西山杉を組み合わせ、山脈を表現した。その山脈の下は、杉の匂いを嗅ぎながら山形の地酒を飲み交わす酒場になっている。

 文翔館の中庭では、床に部屋の間取りを描き、女子学生が自由気ままに自分の部屋で過ごすさまをアートにした「夜子のダンス」、館内では人気絵本作家のミロコマチコのカモシカにも出合える。山形の伝統工芸「笹野一刀彫 鷹ぽっぽ」もあった。

 文翔館の外では創業100年を超える仏具専門店「長門屋」の蔵をリノベーションし、映像作品を上映。蔵の手前には阿弥陀如来が安置される慈光明院もあり、まちに残る歴史遺産を発見する機会にもなる。向かい側の「gura」では、アートな表紙を付けた本を販売するブックカフェ「7次元」もある。

 ◆埋もれている仏像に光

 山形市上桜田の東北芸術工科大キャンパスでは「山のような100ものがたり」を開催。個々の作家が「山形らしさ」を求め、これまで意識されてこなかった所に焦点をあて、民俗的な資料と芸工大で生まれたアートが入り乱れる。まずユーモラスにも思える大江町の雷神社の「風神雷神像」が出迎え、現代も村山地方に残るムカサリ絵馬や白鷹町の木造御沢仏像など、埋もれている仏像にも光を当てた。

 異彩を放つのが芸工大、三瀬夏之介教授の「ぼくの神さま」。奈良県出身の三瀬は、奈良の大仏をずっと「ダサい」と思ってきたが、その存在に救われたときの思いを込めて描いた。奈良の大仏と同寸の大仏の目が見る者を圧倒する。

 東日本大震災後の平成24年、「アートでまちを元気にできないか」と、同大の根岸吉太郎理事長の提案で始まったビエンナーレ。人が減り、まちに活力もなくなる中、アートがあるだけで、気づかなかったまちの風景を知り、まちの見え方も変わる。そんな芸術祭になっている。