【自慢させろ!わが高校】山口県立山口高校(上) 国際コンテストで「GJ!」 成長見守る3大臣の書 - 産経ニュース

【自慢させろ!わが高校】山口県立山口高校(上) 国際コンテストで「GJ!」 成長見守る3大臣の書

米ピッツバーグであった科学技術コンテストで、海外の研究者らに説明する山高の卒業生ら(NPO法人日本サイエンスサービス提供)
 5月、米ピッツバーグ。2カ月前に山口県立山口高校を卒業した3人が、専門家を前に、自身の研究成果を英語で発表した。主に高校生を対象とする国際的な科学技術コンテスト「インテル国際学生科学技術フェア(Intel ISEF)2018」だ。
 3人は在学中に研究を始めた。テーマは、水中でドーナツ状の泡を作り、このバブルリングの周辺で、水がどう動いているかの解明だった。
 発表内容は、関心を集めた。コンテスト審査員だった米国の大学教授は、もっと知りたいと思ったらしく、教え子の大学生を連れて、3人を訪れた。
 英語で懸命に説明する3人に、教授は親指を立て、笑顔でこう告げた。
 「Good Job!」
 発表した村本剛毅さん(19)は「物理分野への貢献を評価して『良い仕事をしたね』と言ってくれたように感じた。苦労が報われたようで本当にうれしかった」と振り返った。
 実際、研究は大変だった。
 山口高校(山高(やまこう))の理数科クラスの生徒は、2年生からチームに分かれて、独自の研究をする。生徒自身が研究テーマの案を持ち寄り、興味があるチームに入る。「バブルリング」も、こうしたチーム研究の一つだった。
 バブルリングチームは、物理研究室を拠点に活動した。メンバー3人はクラブ活動もある。夕方から集まり、連日、夜まで研究に没頭した。
 研究資金は少ない。実験装置は知恵を絞り、手作りした。接着剤を糸状に垂らし、その動きで水流を測定した。道具作りに必要な物資を求めて、ごみ捨て場をあさることもあった。
 だが、メンバーにとって、こうした工夫こそ、科学の楽しみだった。
 メンバーの一人で、現在は山口大医学部に通う小林由衣さん(18)は「形にとらわれず、自由な発想で科学を楽しめた。何にでも挑戦しようという気持ちを育ててくれた3年間でした」と語った。
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 山高の創立は、公式には明治3(1870)年の山口中学(旧制)の誕生時とされる。だが、学校関係者は江戸時代の文化12(1815)年に、萩藩士・上田鳳陽が設立した「山口講堂」を真のルーツと位置付ける。
 昭和25年、男女共学の山高となった。長い歴史を通じて、各分野で国を引っ張る人材を輩出してきた。
 政治家をみれば、岸信介、佐藤栄作の2人の首相経験者が卒業した。安倍晋三首相の父、晋太郎元外相もそうだ。校内の資料室には、3人の書が掲げられ、在校生を見守る。
 文化人も多い。詩人の中原中也や、作家の国木田独歩、小説家の重松清氏(55)=87期=も、戦前戦後の違いはあるが、山高で学んだ。
 こうした人々も、最初から逸材だったわけではない。生徒同士で切磋琢磨(せっさたくま)し、育っていった。
 「中学時代の成績はトップだったが、高校では全く刃が立たず、まさに『井の中の蛙大海を知らず』と思い知った。そのおかげで、こつこつと勉強に取り組むようになり、東大に合格できた」
 元山口県知事の二井関成氏(75)=67期=は、こう振り返った。
 山口市長の渡辺純忠氏(73)=69期=も、高校時代にもまれた経験が、今に生きるという。
 「勉強よりも、ラグビー部の活動が印象深い。監督や先輩の熱い指導を受け、厳しい練習に耐えた。ともに経験を積んだ仲間がいたからこそ、政治家になって『誠を尽くしたい』と思えるようになった」
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 さらに個性的な人材を育てようと、昭和44年、理数科を設置した。
 山口商工会議所副会頭で弁護士の末永久大氏(51)=92期=は、昭和61年に理数科を卒業した。入学当初は理系でエンジニア志望だったが、在学中に弁護士を志し、京都大法学部に進学した。
 「同級生39人のうち、6、7人が東大に進んだ。医者や大学教授、アナウンサーになった同級生もいる。僕は、こんなすごい連中に引っ張られたから、弁護士になれたんです」
 ただ、受験勉強漬けではなかった。
 末永氏は「昼休みは体育館に駆け込んで、理数科のクラス全員でバレーやバスケをしました。そのおかげか、球技大会ではほぼ負け知らず。入試の直前までそんな状態でした」と笑った。
 生き生きと高校生活を送る。その雰囲気は、今も変わらない。
 今年8月20日、理数科進学を希望する中学生や保護者を対象とする説明会があった。在校生による体験授業で、2年の男子生徒、柳井悠(はるか)さん(16)は開口一番、「好きな生物はクモとガです。よろしくお願いします」と言った。
 驚いた中学生や保護者もいたようだが、柳井さんは「中学校や小学校で浮いていた僕らも、ここなら大丈夫。みんな変人ですから」と話した。
 変人かどうかはさておき、小中学校で浮いた人間も受け入れ、長所を伸ばす。山高には、そんな懐の深さがある。
 理数科の生徒が多く所属する化学生物部は一昨年、微生物を使った水質監視装置を開発し、スウェーデン・ストックホルムで開催された発表会に招かれた。
 当時の生徒は、海外の研究者に混じって、王室晩餐(ばんさん)会にも出席した。
 理数科主任で引率した児玉伊智郎教諭(53)は「あの光景を見ていると、私たちが生徒の限界を定めてはいけないと、つくづく思いました。卒業生の佐藤栄作さんはノーベル平和賞を取りましたが、後輩はきっといつか、化学や物理学などでもノーベル賞を取りますよ」と語った。(大森貴弘)
 =山口高校(下)は9月22日掲載予定です。