産経国際書展東北展「伊達政宗賞」 八戸の五戸光岳さん(64) 書と居合に通じる「無」の精神

 

 「第35回記念産経国際書展東北展」(産経新聞社、産経国際書会など主催)が7~12日、仙台市青葉区のせんだいメディアテークギャラリーで開催される。地区最高賞の伊達政宗賞を受賞した青森県八戸市の五戸光岳(こうがく)(本名・敏明)さん(64)に書道に向き合う姿勢や作品への思いを聞いた。 (福田徳行)

 書道家と居合道師範という2つの顔。その道では大家として知られる。

 「集中力を高め、これと決めたら一気に進む気迫、勢いが書と居合に通じる」

 高校時代に剣道部に所属。ただ「何か物足りなさ」を感じていた矢先、たまたま居合道を見る機会があり、衝撃を受けた。昭和48年に海上自衛隊に入隊し、配属された横須賀基地(神奈川県横須賀市)で居合道に入門。居合道の先生が書家でもあったことから同基地の書道部に入部。以来、書の魅力にはまった。60年に「臨泉会」に入門、佐々木月花(げっか)氏の直弟子となり、書家としての地位を築くと同時に、平成20年に定年退官してから武道家としても活躍している。

 「書道も居合も自分と向き合い、集中して無になることが重要」。書く題材を決める際には書の辞書を片手に何度もその字の意味合いを考える。

 受賞作「無事」には特別の意味を込めた。6月に帰還した宇宙飛行士、金井宣茂さんとの出会いだ。海自大湊航空隊(むつ市)に所属していたころに体調を崩し、医官として自衛隊大湊病院に勤務していた金井さんの診察を受けた際、金井さんから居合道の指導を頼まれた。以来、稽古を通して交流を深めている。

 金井さんが宇宙ステーションで活動中に心掛けたのが「残心」。常に油断せず、集中し続ける武道の精神だ。「私の教えを宇宙飛行士の仕事に生かしてくれていることがうれしい」。宇宙に飛び立つ前にも「ミッション、頑張ってきます」というメールが来たという。「無事に帰って来られて何より」と目を細めた。受賞作は金井さんが無事に帰還してくれることを願い、渾身(こんしん)の思いを込めてしたためた力作だ。

 現在、約10人に書道を教える傍ら、21年に開館した居合道場「五眼館(ごげんかん)」館長として約25人の門下生を抱える。「書道と武道を通して精神、技、礼節を教えていきたい」。鋭い眼光と自慢のひげが一層、力強く見えた。