横浜美術館「モネ それからの100年」展

かながわ美の手帖
クロード・モネ「睡蓮」(1906年)=吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)

 ■現代アートと併置、創作テーマを共有

 横浜美術館で初めて、クロード・モネをテーマとした大規模な展覧会が開催中だ。「モネ それからの100年」展。印象派の巨匠であるモネの初期から晩年までの絵画25点(うち日本初公開2点)が、後の世代の26作家による現代アート66点と併置されている。どちらも主役として据え、そのつながりを見定める斬新な企画だ。

 ◆刻印された先駆性

 モネ作品は初期、中期、後期の、それぞれの時期にモネが寄せた創作上の関心に沿う章立てにして、時系列で展示されている。長いキャリアの変遷をたどることができる。

 初期のモネは「色彩と筆触」、中期は「色の塗り重ねと、そこに現れる光のイリュージョン」、後期は「フレームから拡張していく画面」に関心を寄せていたと、同館主任学芸員の松永真太郎は概観する。

 初期は印象派運動を主導した1870年代をまたぐ時期。当初から色彩や筆触への「先駆的な」こだわりが見られるという。

 中期の1880~90年代は「積みわら」などの連作に取り組むが、一番描きたかったのは一瞬の大気のゆらぎ、光の移ろいだった。色を塗り重ね、画面が発光するような新しい絵画を模索した。

 後期は90年代以降、「睡蓮(すいれん)」を連作。睡蓮の咲く水面に周囲の樹木や空が反射して映り込み、実像と虚像がオーバーラップする。その水面を断片的に切り取る構図は、フレーム外までイメージが続く感覚を見る者にもたらす。

 どの時期も独自性と革新性に満ちている。それを裏付けるのが、同じ空間に展示されている、もう一方の主役、現代アートの数々だ。「必ずしもモネからの影響の自覚がなくても、われわれから見て、モネと結びついていると感じられる作品」(松永)が選ばれた。半数以上がモネと親和性のある日本人作家。モネの向き合った創作課題が引き継がれ、共有されている。

 ◆視覚の喜び再発見

 中期と後期の間には「モネへのオマージュ」と題して、モネの絵画から直接的に引用した作品ばかりを集めた章を挟んでいる。ロイ・リキテンスタイン「積みわら #1~6」(1969年)、ルイ・カーヌ「睡蓮」(93年)、福田美蘭(63年生まれ)の「モネの睡蓮」(2002年)などだ。

 福田は本展のために新作「睡蓮の池」、さらに連作として「睡蓮の池 朝」を寄せた。同じく湯浅克俊(78年生まれ)と水野勝規(82年生まれ)も、新作を本展で発表した。

 同じ展示空間でのモネとの競演。現代アートは一般に取っ付きにくいとか難解とかというイメージもある。だが、松永は「モネの風景を見るようなまなざしで現代アートを見ると、そこには色彩のハーモニーや視覚的な楽しさがある。モネというキーワードを通して、純粋な視覚の喜びを再発見してもらえるのではないか」と期待を込めている。=敬称略(山根聡)

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 展覧会「モネ それからの100年」は横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3の4の1)で24日まで。午前10時から午後6時(14、15、21、22日は午後8時半まで)。入館は閉館の30分前まで。木曜休館。観覧料は一般1600円、大学・高校生1200円、中学生600円、小学生以下無料、65歳以上1500円。問い合わせはハローダイヤル(電)03・5777・8600。

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【用語解説】クロード・モネ

 1840年、仏パリ生まれ。50年代に戸外で風景画の制作を開始。74年、ピサロ、ドガ、ルノワールらとグループ展を開催し、「印象、日の出」を出品する。83年、パリ郊外のジヴェルニーに移る。88年ごろから「積みわら」、97年ごろから「睡蓮」の連作に着手。1909年、「睡蓮」連作48点による個展を開催した。14年から画業の集大成となる「睡蓮」の大装飾画を制作。26年、86歳で死去。