横浜市が障害者と企業の橋渡し 「働きやすい会社、生きやすい社会」求め

 

 今年4月から改正障害者雇用促進法の施行により、民間企業などで働く人に占める障害者の割合(法定雇用率)が引き上げられ、新たに精神障害者も算定の対象となった。一方で、県内では障害者の雇用率は全国に比べて低いのが実情だ。働きたい障害者と企業の“すれ違い”を減らそうと、横浜市では障害者雇用をめぐる動きが活発化している。個人の状況に応じて、長く働き続けられる環境づくりに力を入れる企業が先行事例になっている。(王美慧)

 某日の午前、医療法人が運営する就労移行支援事業所・就労継続支援B型事業所「ジョブネット横浜」(神奈川区)では、約10人の利用者らがお菓子などを箱詰めする作業に取り組んでいた。同事業所は精神・発達障害者を対象に、利用者の個性に合った支援内容を計画し、16人が通所している。

 ◆訓練で自信

 企業から販促物を受託し、軽作業や事務作業などを実施。納品書の作成や電話対応も利用者が行っている。「納期通りに納める責任感や“報・連・相”の能力が養われる」と、管理者の首藤直史さん(62)は話す。

 IT系企業に勤めていた当時の人間関係が原因で、約12年前にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した男性(42)は「早く働きたい。事業所での訓練が自信にもつながった」と期待を膨らませる。約5年前に鬱病を発症した男性(57)は「事業所では多くの人と一緒に働くことができ、とても良かった。すぐにでも働きたい。どの職種でも挑戦したい」と意欲を見せた。

 首藤さんは「(精神障害者や発達障害者には)コミュニケーションを苦手に感じる方や環境の変化に敏感な方が多い」とした上で、「病状に波があるなかで、一人で抱え込まずに相談することや、周囲の障害理解の促進も必要。日頃から互いに相談できる体制づくりが大切」と語る。

 ◆思い込み払拭

 今年4月には、改正障害者雇用促進法の施行で、民間企業に求められる法定雇用率が2%から2・2%(45・5人以上の企業)に上がるなど、精神障害者が働くことへの社会的関心は高まっている。

 こうした背景があるなか、市健康福祉局障害企画課は、多様化する就労支援ニーズに対応できるよう、障害福祉サービス事業所の職員に障害者雇用企業の現場を体験してもらい、就労促進を図ろうと「就業体験研修」を平成23年度から実施している。現在は、28社が就業体験に協力し、参加応募者も増加傾向にある。同課の担当者は「事業所の職員たちも現場を体験することで、『利用者にこの職種は厳しいのでは』という“思い込み”を払拭することにもつながる」としている。

 協力企業の一つが、精神障害者雇用に力を入れているシステム開発「富士ソフト」(中区)の、雇用した障害者数を親会社の雇用率に算入できる特例子会社「富士ソフト企画」(鎌倉市)だ。社員218人のうち、186人が障害を持っている。さらに、そのうち121人は精神障害者だ。

 同社は、職場定着のために雇用管理でさまざまな工夫をしている。例えば、会社に来る習慣をつけるため、負担の少ないフレックスタイム制を導入しているほか、きめ細かい悩み相談に対応できるよう「JOBサポート窓口」を設けているなど、障害者が働きやすい体制を整えている。

 同社企画開発部の遠田千穂部長(42)は「障害は、明日はわが身。仮に自分が障害を持ったとしたら、どんな会社なら“働きやすい”か、どんな社会なら“生きやすい”かを考えることで、障害者雇用は促進すると思う」と話した。

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【用語解説】障害福祉サービス事業所

 障害者の就労支援に携わる就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などを指す。就労移行支援事業所は、一般企業などへの就労に向け、事業所内や企業での実習、本人の適性にあった職場を探し、就職後の職場定着のための支援を実施。就労継続支援事業所は、就労などの機会を提供するとともに、知識や能力の向上のために必要な訓練を行う。雇用契約を結び利用する「A型」と結ばない「B型」に分かれている。