【かながわ美の手帖】箱根ラリック美術館「オパールとオパルセント 魔性の光に魅せられて」展 - 産経ニュース

【かながわ美の手帖】箱根ラリック美術館「オパールとオパルセント 魔性の光に魅せられて」展

櫛「ハヤブサとオパール」(1898~1900年頃)
花器「バッカスの巫女たち」(1927年)
櫛「孔雀」(1898~1900年頃)
ブローチ「カトレア」(1898~1902年頃)
彫像「タイス」(1925年)
企画展「オパールとオパルセント 魔性の光に魅せられて」の会場=箱根ラリック美術館(山根聡撮影)
 ■誰も見たことなどない微妙な色彩により魅了
 箱根ラリック美術館で開催中の企画展「オパールとオパルセント 魔性の光に魅せられて」を訪ねると、ルネ・ラリック(1860~1945年)という芸術家の企てに幻惑される。虹色に輝く天然宝石のオパールを使った独創的な宝飾(ジュエリー)と、オパールの色彩をガラス工芸で追求したオパルセントガラス。個性あふれる30点ほどの展示物が、光の反射や透過によって色彩を微妙に変化させる。まさに夢幻的だ。
 ◆原石も展示
 ラリックは仏シャンパーニュ地方出身。16歳からパリで宝飾職人の見習いを始め、20代で宝飾デザイナーとして一本立ち。顧客の大女優、サラ・ベルナールに才能を見いだされ、デザインで勝負していくことを決意する。
 1900年、40歳のときにパリ万博に出品した宝飾作品がグランプリに選ばれる。まもなくガラス工芸家に転身し、さらに成功。美術史的にはアールヌーボーからアールデコに移行する時期だが、その両方の様式で名声を得た。
 前半生の宝飾デザイナーの時代に、彼が最も愛した素材がオパール。後半生のガラス工芸家の時代には、オパルセントガラスによってオパールのような色彩変化を演出したというわけだ。
 では、オパールとはそもそもどんな石なのか。同館学芸員の浦川佳代子は「光が当たったときのうごめくような、何か潜んでいるかのような、神が作ったとしか言えないような…古代から特別な存在」と、まずは県立生命の星・地球博物館(小田原市)から借りた原石の展示物を示した。鉱物としてのオパールへの目配りを忘れない。
 ◆官能美を表現
 実は19世紀には、オパールは当時書かれた小説のせいで「不運をもたらす石」とされていたが、ラリックは全く気にしなかった。七色に輝き、同じ色が一つとしてないオパールを使い、誰も見たことのない宝飾を作りたい-。その一心だったという。
 アールヌーボー時代に好まれたモチーフのブローチ「カトレア」は、大きく開いた花びらがそのままオパールだ。「薄さや、やわらかさ、微妙な色合い。自然のものは一色ではないことを表現している。これだけのサイズの素材は、今では入手困難。手に入ってもかなりの高額だ。こんな加工技術をもつ人もいない」と浦川は言う。ブローチ「アネモネ」や櫛(くし)「孔雀」、同「ハヤブサとオパール」も同様だ。
 続いてオパルセントガラス作品のコーナーへ。浦川は「とくに魅力が引き立つのが女性像」と強調する。その代表作が花器「バッカスの巫女(みこ)たち」だ。
 写真では伝わりにくいが、乳白色の半透明ガラスの厚い部分に施したオレンジ色で、女性の肌の透明感とやわらかさが表現されている。中腰になって視点を低くすると、光の当たり方が変わり、青白く見える。
 微妙な色の混ざり具合により、踊りの躍動感に肉感的な表現が加わる。彫像「タイス」もまた、しかり。圧巻の官能美だ。=敬称略(山根聡)
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 企画展「オパールとオパルセント 魔性の光に魅せられて」は箱根ラリック美術館(箱根町仙石原186の1)で12月2日まで。午前9時から午後5時(入館は午後4時半まで)。年中無休(展示替えのため臨時休館あり)。入館料は大人1500円ほか。問い合わせは同館((電)0460・84・2255)。
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【用語解説】オパルセントガラス
 16世紀にベネチアで開発され、ルネ・ラリックが独自に改良したガラス工芸技法。原料にリン酸塩などを加えて溶解し、成形するときに冷却、再加熱を続けて行うことにより、薄い部分が透明になり、厚みのある部分は乳白色を発する。見る角度や光の加減で色の濃さ、色味までが宝石のオパールのように変化する。