鹿児島県立鶴丸高校(下) 「文武一道」…盛んな部活動

自慢させろ!わが高校

 ■思い出深い仮装演技「ドリーム」

 伝統校、鹿児島県立鶴丸高校には、学校がある鹿児島市だけでなく、広く県内から生徒が集まる。

 焼酎大手、浜田酒造社長の浜田雄一郎氏(64)=23回生=は、鶴丸進学を目指して、中学時代から地元を離れた。いちき串木野市の小学校を卒業後、鹿児島市にある両親の友人宅に下宿した。そこから、鶴丸への進学者が多い中学校に通ったという。

 ところが浜田氏は、都会に誘惑された。「遊ぶ環境がそろっており、シティボーイに連れられ遊び回るうち、成績が急降下して、下宿先をかなり心配させた」と明かす。

 浜田氏を誘惑した一人が、同級生だった元鹿児島県議の吉野正二郎氏(64)=23回生=だった。

 それでも2人は鶴丸への進学を果たした。

 高校では、仲間4人で春休みの補習をさぼり、自転車での鹿児島1周旅行をしたことがあった。

 吉野氏が先頭を、間に2人を挟んで浜田氏が最後尾を走行した。2泊3日の行程の最終日、雨が降っていた。坂道で仲間の一人がトラックと接触し、背中から坂を滑り落ちた。

 浜田氏は、その光景をよく覚えている。「幸い友人は手にけがをしただけだったが、騒動になって、補習をさぼったことが、学校にばれてしまった」と笑った。

 そんな浜田氏と吉野氏は水泳部に所属し、夏の昼休みや放課後はプールにいた。

 当時、空調設備もなく、校内は暑かった。水泳部の姿を見た、ほかの生徒が自分たちも泳がせてほしいと言ってきた。

 浜田氏はこう懐かしむ。「吉野君が、学校と交渉すると言い出した。生徒の体力増進が大義名分ですが、『女子も来てくれるかなあ』と、本音をもらしていました」

 2人で校長に掛け合った結果、プールを水泳部と一般開放用に仕切って使うことになった。部外の生徒は大喜びだったという。

 鹿児島県議の藤崎剛氏(44)=43回生=は在学中、下宿生の友人が多くできた。家に呼ぶと、父が親切に接していた。

 実は父も、県北部にある宮之城町(現さつま町)出身で、下宿して鶴丸に通ったという。「体育祭では、私の友人の下宿生を家族席に招き入れ、弁当を振る舞っていた」

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 鶴丸はクラブ・部活動が盛んだ。9割前後の生徒が、部活動に参加する。

 学校は文武両道ならぬ「文武一道」を掲げる。「学問も武芸も詰まるところは同じ」という意味だという。

 最近では、山岳部がインターハイ常連校となり、百人一首部も全国大会に出場する。

 「進学校だからスポーツは弱い。そんなイメージを持たれないよう、バスケ部に一生懸命励んだ」。こう語るのは、大島紬(つむぎ)製造や観光事業を手がける藤絹の社長、藤陽一氏(44)=43回生=だ。

 他校に比べ、平均身長が低かったので、「走って勝つ」しかなかった。基礎トレーニングに重点を置き、筋トレも導入した。ラグビー部並みに泥まみれになったという。

 同級生で同じバスケ部に、TBSテレビのプロデューサー、瀬戸口克陽氏(44)=43回生=がいた。小渕優子衆院議員(44)の夫としても知られる。

 瀬戸口氏の姿は、校内で目立っていた。中学時代の丸刈りから少し髪が伸びた生徒も多い中、瀬戸口氏はおしゃれに髪を立てて、学校へ来ていた。

 藤氏によると、瀬戸口氏は控えの選手だった。「私の方がバスケはうまかったが、成績は彼が上だった。同じ部活で同じ練習をし、一緒に立ち食いをして帰る。私は家で勉強しながら、うたたねをする毎日だったのに、彼はいつ勉強しているんだろうと思っていた。陰でかなり努力をしていたんでしょう」

 2人の交流は、今も続いている。

 鶴丸高校は、体力増進にも力を入れる。11月には校内ロードレース大会を、桜島で催す。男子10キロ、女子は5キロを走る。

 教頭の新留克郎氏(50)=37回生=は「私が1年生のときは鴨池陸上競技場周辺でしたが、2年生の昭和59年から桜島にかわった」という。

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 多くの卒業生が、最も思い出深い行事と語るのが、9月の体育祭での仮装演技「ドリーム」だ。

 仮装するのは3年生で、その出し物は、時代を色濃く反映する。

 昭和47年卒業の吉野氏は、45年に発生した三島事件を題材にした。三島由紀夫が所属した「楯の会」の制服を、クラスの女子生徒が作ってくれた。その服装で校庭を1周、来賓のいるテント前で上半身裸になり、「割腹」の様子をまねた。

 現在はクラスごとにテーマを設定し、ダンスを披露する。担任や副担任の教諭も仮装させられるようになった。教諭は翌10月にある文化祭でも、体育祭と同じ仮装をし、受験、卒業を控えた3年生にエールを送る。

 昨年10月の文化祭では、3年8クラスの教員20人で中島みゆきさんの「糸」を歌った。

 同校教諭の宮脇慶次氏(49)=38回生=は、お笑い芸人、サンシャイン池崎さんの仮装で、ステージに立った。「人と人とのつながりの大切さを理解してもらおうと、選曲した」

 鶴丸生は卒業後もつながりを深め、鹿児島県内外で活躍する。あたかも縦糸、横糸となり、布を織りなすようだ。

 はろばろと 流れてやまぬ たゆみなく 日々に新たに ひたすらに 己を彫(きざ)む

 昭和27年制定の校歌の一節だ。校是「For Others」の精神のもと、生徒が切磋琢磨(せっさたくま)し、成長を目指す。鶴丸は来年、創立125周年を迎える。 (谷田智恒)