(5)キリンディスティラリー富士御殿場蒸留所 熟成庫見学の新コースが人気

しずおか“お酒”巡り

 富士山の伏流水と冷涼な環境に恵まれた好立地で、静かに熟成の時を刻むウイスキー蒸留所が御殿場市にある。キリンディスティラリーの富士御殿場蒸留所だ。このほど、一般見学者が立ち入りできなかった熟成庫内に入り、たるの香りを間近に感じられる有料の新見学コースを設定。貴重なウイスキーの飲み比べもでき、早くも予約が殺到しているという。ドラマ放映やハイボール人気をきっかけにウイスキー復権の追い風が吹くなか、こだわりを持つ新商品づくりも進み、注目スポットになりそうだ。

 ◆圧巻の3万5千たる

 5月から始まった新見学ツアーの名は「富士山麓 原酒こだわりツアー」。

 全長12メートルのスクリーンに立体的に映し出された映像でキリンのウイスキーづくりの歴史やこだわりを学び終えると、工場内の見学コースを移動。途中、全長20メートルもの大きな蒸留機「マルチカラム」に加え、ミディアムタイプの原酒を生み出す「ケトル蒸留機」、バーボンのようなヘビータイプを造り出す「ダブラー蒸留機」の3つの蒸留機を見ながら、「この蒸留機を併せ持つのは国内ではここのみ」と説明を受ける。これにより「すっきりとしながらも、複雑なフレーバーの原酒を生み出せる」(梶尾伸明工場長)という。同蒸留所で製造されるグレーン原酒は「リッチグレンウイスキー」と呼んでいる。

 ここまでは従来の見学コースでも楽しめるが、新たなコースの目玉は、熟成庫の内部に入れる点だ。

 バスで移動し、深い緑の中にたたずむ熟成庫の内部に入ると、全長140メートル、高さ15メートル、奥行き60メートルの棚に、約3万5千ものたるが目に飛び込む。ひんやりとした空間には、たるそのものや、ウイスキーが持つ果物や花などが複雑に混じり合った何ともいえない心地よい香りが立ちこめ、短い時間ながら癒やされる。

 ◆5種類の原酒味わう

 ウイスキーづくりのこだわりを堪能した後に待っているのが、5種類の原酒のテイスティングだ。

 ライトタイプから試飲をし、ヘビータイプまで飲み進み、同醸造所の主力商品「富士山麓樽熟原酒50度」、最後は、新発売の「富士山麓シグニチャーブレンド」を味わえる。

 1ツアー、18人の募集で、1人1千円がかかるが、「毎回満員」の盛況だ。

 40代以上にとってはキリンのウイスキーというと、キリンディスティラリーの前身である「キリン・シーグラム」という社名になじみがあるのではないか。シーグラム時代に誕生した同社初の国産ウイスキー「ロバートブラウン」など数々の銘酒も富士御殿場蒸留所で製造されている。

 同蒸留所では、国産ウイスキーの奥深さ、富士御殿場の味をもっと多くの外国人にも知ってもらおうと、来年、英語でのツアーガイドや音声ガイドシステムの設置などを導入する予定。また、すでに販売を行っている仏のほか、米国やアジアなど海外への販路拡大も協議を進めているという。

 「澄んでいて、華やかな味わいや香りが広がるキリンならではの『クリーン&エステリー』というキーワードに今後もこだわっていく」(梶尾氏)とし、さらなるブランド価値向上に向け、商品投入も含め、積極策を打っていく考えだ。(那須慎一)

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 ■キリンディスティラリー富士御殿場蒸留所

【代表者】梶尾伸明氏

【開業年】昭和48年

【所在地】御殿場市柴怒田(しばんた)970

【電話】0550・89・4909

【休館日】月曜日、年末年始

【販売など】見学は随時受け付けており、詳細は電話かウェブサイトで。限定商品の購入も可能。

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 ◆富士山麓シグニチャーブレンド

 味と香りの豊かなグレーン原酒の作り分けをして製造。熟成のピークを厳選し、国際的コンテストで世界最優秀賞を受賞したマスターブレンダー、田中城太さんが絶妙なバランスでブレンドするなど、こだわりが詰まっている。

 洋ナシやパイナップルなどを思わせる華やかな果実香に加え、黒糖や焼き菓子のような甘く香ばしい風味が重なり、円熟した味わいが特徴だ。

 内容量は720ミリリットル、アルコール度数は50%。価格はオープンだが、富士御殿場蒸溜所のファクトリーショップとキリンオンラインショップDRINX価格は5400円。