(2)磯自慢酒造の高級純米大吟醸「La Isojiman」

しずおか“お酒”巡り

 ■最高品質求め挑戦重ねる 

 いまや、焼津の銘酒にとどまらず、世界のVIPをもうならせる日本酒ブランドとなった「磯自慢」。平成20年に洞爺湖サミットの乾杯酒になったことで注目を集めたが、販売量などをむやみに増やすことなく、愚直な酒造りにこだわり続けている。

 ◆こだわり抜いて1本10万円

 そんな磯自慢酒造が次なる挑戦に打って出た。苦労の末、完成した税抜き価格10万円という高級純米大吟醸「La Isojiman」の投入だ。「海外の高級ワインのように、高級な日本酒があっても良いのでは」との寺岡洋司社長(62)の思いがぎっしりと詰まっており、多くの関心が集まっている。

 「目指していた崇高なる透明感のある酒になった」

 寺岡社長は、昨秋、初めて市場に投入した「La Isojiman」の仕上がりをこう表現する。

 香りは「マスカットアレキサンドリアやクラウンメロン、南洋フルーツのよう」という。

 最高品質の日本酒造りの構想は今から4~5年前、長年の取引先で各地の銘酒を取りそろえる「はせがわ酒店」(東京)の長谷川浩一社長から提案を受け、「1年考えて決断した」。

 ただ、28年に開始した挑戦は苦難が続いた。材料と製法にとことんこだわったからだ。

 材料は、最上級の兵庫県特A地区産「東条秋津・山田錦特上米100%」を調達。製法は、従来、28%までしかしなかった精白を、最新鋭の精米機により19%まで行うと決めた。麹造りも通常より約10時間長くし80時間もかけた。「企業秘密」という酒米を搾った後の濾過(ろか)処理までこだわった。杜氏(とうじ)をはじめ、社員総出で毎日手をかけたが、720ミリリットル入りで450本作った「La Isojiman」の試作品は、「どうしても納得できるものに仕上がらなかった」ため、発売は幻に。

 昨年、再チャレンジの末、10月に470本の発売にこぎ着け、特段宣伝をしないにもかかわらず、口コミで広がり完売した。寺岡社長は、挑戦をやめず、今年は、さらに精白を18%まで行った。約500本の仕込みは完了し、焼津の貯蔵庫で秋の出荷を待つ。

 32年発売分までは、はせがわ酒店のみの販売とするが、33年以降は、「若干の特約店に販路を広げたい」考えだ。

 ◆「階段を一歩ずつ」

 JR東海道線、焼津駅から車で海側に10分ほど行くと、天保元(1830)年創業の老舗、「磯自慢」の看板が目に入る。

 寺岡社長によると、現在酒蔵がある焼津市(旧小川村)の田で収穫された米の一部を使って江戸末期に酒造りを始めたのがきっかけという。

 しかし、バブル期の始まりとともに日本酒消費量の減少傾向が顕著になり、昭和50年頃に、世に先がけて「吟醸酒」の製造に取り組むなど、高級志向にシフトチェンジを図り、今のブランド力を構築できた。

 日本酒の酒蔵は、特に寒冷地などに多い印象があるが、なぜ焼津の地でおいしい酒ができるのか。

 寺岡社長は「冬も暖かい環境は日本酒づくりにとっては正直マイナス。ただ、富士山の伏流水が豊富で、酒の命である水に関しては最適な場所」と言い切る。

 日本航空(JAL)の国際線ファーストクラスでは、同一銘柄としては唯一となる14年連続でJALオリジナルの純米大吟醸が提供されるなど、VIPに愛される一面がある一方、「手頃な本醸造がおいしい」との声も多く聞かれる「磯自慢」。人気が高まり、販売量を増やしてほしいとの声が高まっているが、社長を含め、杜氏や蔵の管理などを行うスタッフ総勢16人が総力を挙げつつも、「階段を一歩ずつ上がっていくスタイルは変えない」とし、じっくりと、さらなる高みを目指す。 (那須慎一)

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 ■La Isojiman 磯自慢ブランド最高峰の純米大吟醸。最上級の兵庫県特A地区産「東条秋津・山田錦特上米100%」を全量使用し、最新鋭のダイヤモンドロールの精米機で精米歩合18%(82%削る)までゆっくりと丁寧に精米。さらに、極限まで酒米を洗米するほか、独自の秘法の麹造りなどにこだわり、珠玉の一杯を生み出した。

 価格は10万8000円。今年は10月1日から「はせがわ酒店」(東京)を通じて販売される。約500本限定。はせがわ酒店の問い合わせは(電)03・6273・4355。

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 ■磯自慢酒造

【代表者】寺岡洋司氏

【創業年】天保元(1830)年

【所在地】焼津市鰯ケ島307

【電話】(電)054・628・2204

【販売など】直売店で限定発売しているが、一般見学は受け付けていない