【しずおか“お酒”巡り】(1)伊豆市商工会土肥支部のワイン「らぶ・ま~れ」 - 産経ニュース

【しずおか“お酒”巡り】(1)伊豆市商工会土肥支部のワイン「らぶ・ま~れ」

 ■海底熟成、短期間で味に深み 
 口に含んだ瞬間に感じる渋み。のどに流し込むと濃厚な香りが口の中に広がり、海を感じられるような気がする。このワイン「らぶ・ま~れ」が保管されていたのはワインセラーではなく、伊豆市土肥から300メートル沖合、水深20メートルの海底だ。
 今年は、水温が上昇する夏前の1月から5月までの約4カ月間、約90本のワインたちが海底で過ごした。同ワインの生みの親、伊豆市商工会土肥支部の小長谷(こながや)順二さん(56)は「水圧の微振動があり、海底での1カ月は地上の1年に相当する。つまり4カ月沈めていると4年分熟成されることになる」とし、短期間で深い味わいにつながる理由を明かす。
 さらに、海底に沈めることで瓶には貝殻が付着し、海底熟成ワインとしての見た目の魅力にもつながるという。引き揚げられたワインは出荷されるまで土肥金山の坑道に保管。深みを増した味や珍しさが人気を呼び、当初はイベント用にしか用意していなかったが昨年からは本格的に販売を開始した。
 ◆「奇跡のシャンパン」に着想
 ワインをおいしく保存するためには、温度は13~15度▽湿度は70~80%▽直射日光のあたらない冷暗所で保管する、という3つの条件がある。
 この3つの条件にどこまで合致したのかは不明だが、海底に80年以上沈んだままだったシャンパンが飲める状態で発見され、話題になった。1916年、シャンパンなどを積んだ船がスウェーデン沖で沈没し、約80年の時を経て98年に引き揚げられた。ただ、シャンパンは劣化しておらず「奇跡のシャンパン」と呼ばれたという。
 この奇跡の話にインスピレーションを受けたのが小長谷さんだ。平成26年ごろに奇跡のシャンパンの話を聞きつけ、翌年から海底熟成を始めた。当初は赤ワインの他に白ワインやスパークリングワインなども一緒に沈められた。
 しかし、白ワインは海底に届く光のため劣化、スパークリングワインは水圧の関係で栓が緩くなってしまった。そこで最終的に選ばれたのが伊豆市中伊豆で生産されたブドウを使用した「志太シンフォニーレッド」という赤ワイン。この赤ワインは熟成に適していることが実証できた。
 さらに、ワインに海水が混ざらないよう、特殊なキャップを採用。「ゾルクキャップ」と呼ぶキャップは人工コルクを用い、100%再生可能な環境に優しいコルクだが、ビンの口を覆うような形状も海水が入らないことにつながり、採用された。水圧に耐えられるよう瓶も特製だ。
 ◆DC本番「ジャンプ台に」
 今年はJRの「静岡デスティネーションキャンペーン(DC)」のプレイベントの一環として、リゾート列車「伊豆クレイル」の車内で、「らぶ・ま~れ」とワインたるで通常熟成された「志太シンフォニーレッド」との飲み比べイベントが実施され、好評を博した。来年のDC本番に向けてJRから「らぶ・ま~れ」を260本ほど受注しており、小長谷さんは「手が回るだろうかと(心配にも)思うが、いいジャンプ台になれば」と期待感を示す。
 「直接伊豆に買いに来てもらいたい」という理由からネットでの販売は予定していない。ぜひ、伊豆の旅の思い出に現地で入手してはどうだろうか。 (吉沢智美)
                   ◇
 県内各地には、魅力的な酒蔵などが多く点在する。ぜひ足を運んで味わってもらいたい“お酒”が生み出されるスポットを記者が巡った。
                   ◇
 ■らぶ・ま~れ 価格は1本7000円とやや高めだが、「元のワインが3500円、キャップやボトルの材料費でプラス500円。それにダイバーさんや漁船を借りる費用を足すとどうしてもその値段になってしまう」と小長谷さんは事情を明かす。
 ラベルのデザインは旅人岬の「ハートの敷石」の写真を使用。ラベルの貼り付け作業も商工会の会員らが手作業で行っており、小長谷さんの自宅プリンターで印刷されたものだ。
 駿河屋酒店、高橋商店、土肥金山売店(いずれも伊豆市土肥)の3カ所で購入できる。
                   ◇
 ■伊豆市商工会土肥支部事業部
 【所在地】伊豆市土肥670の2
 【スタッフ】事業部のメンバーは10人ほど。観光協会や中伊豆ワイナリーなども含めると20人弱で活動
 【問い合わせ】同市観光協会土肥支部(電)0558・98・1212