「空き公共施設」の民間活用(上) 企業の地方進出「実験」に最適 ちばぎん総研主任研究員・五木田広輝

数字から見えるちば
ちばぎん総研受託調査部研究員の五木田広輝さん

 人口減少や平成の大合併と称される市町村合併などにより、役割を終えた学校、保育所、公民館などの「空き公共施設」が全国的に増加している。そうした施設の多くは、交通アクセスが悪い過疎化が進行する地方部に集中しており、千葉県も例外ではない。空き公共施設の統計はないが、平成14~27年度に小中学校・高校など131校が廃校となっている。

 千葉県ではこうした廃校を含む空き公共施設を新たな地域資源とみなし、企業誘致の受け皿として28年度から民間活用を促す取り組みを推進している。28年度から29年度にかけての誘致活動は12社が空き公共施設へ進出する成果へとつながるなど、千葉県は徳島県などと並んで空き公共施設の利活用の先進県となっている。

 徳島県では、徳島市から車で約1時間の場所に位置する人口5000人規模の神山町に28年度までに県外から民間施設を含む13社が立地した。16年に山間部の難視聴対策でケーブルテレビ兼用の光ファイバー網を整備した中で、22年にクラウド名刺管理サービスのベンチャー企業が古民家をオフィスとしたのを契機に、IT企業のサテライトオフィス進出が相次いだ。

 企業の地方進出には必要条件と十分条件の双方の整備が必要だが、まず必要条件について、千葉県と神山町を比較すると、南房総や外房は「域内全域高速ネット通信網整備」という点では及ばないものの、「都会の喧騒(けんそう)から離れ自然に囲まれて温暖で過ごしやすい環境」は同等であり、「都心から車や電車・バスで1時間半から2時間の距離」「羽田・成田空港との近接性」では、千葉県が明らかに勝っている。

 一方、「企業集積による連携やブランド化」が企業進出のための十分条件になるが、この点は、先進地域である神山町に及ばず、これからの課題である。

 神山町への企業進出が進んだもう一つの理由として、「NPO法人グリーンバレー」の役割も大きい。同法人は国内外の芸術家を同町に招いて創作活動に取り組んでもらう「神山アーティスト・イン・レジデンス」を11年に始めたのを皮切りに、今では創業支援、シェアオフィス運営、町への視察対応、移住相談、情報発信など、幅広い活動をワンストップで手がける。

 千葉県においても行政だけでは行き届かない部分に対応したり、中長期的に活動を継続するためにNPO法人などの民間団体と連携する視点を持つことが重要である。

 空き公共施設は今後も増え続けるが、千葉県は、都会にも自然にも近い「ローカルの入り口」として、地方進出の最初の「実証実験」の場に最適である。都内企業による、お試しの研修・合宿を含めて県内の空き公共施設の利活用がさらに進むことを期待したい。(寄稿、随時掲載)