【突破力】カネリョウ海藻(熊本県宇土市) 海藻利用のフロンティア - 産経ニュース

【突破力】カネリョウ海藻(熊本県宇土市) 海藻利用のフロンティア

 日本周辺では1500~2千種類もの海藻が採れる。海の恵みを使った食品で、ビジネスチャンスをつかんできた。
 本社は、有明海と八代海に突き出た宇土半島の付け根にある。敷地には、海藻の香りがふわりと漂う。ここから、たれ付きメカブや味付きモズクが出荷される。
 原材料に使う海藻は100種類、そこから生まれる商品ラインアップは1千種類を上回る。この分野の全国シェアは20%を超える。
 創業者の高木良一会長(86)は戦後、個人で海産物の卸売りをしていた。昭和42年、高木商店として海藻の加工に乗り出した。
 もともと、地元の漁師が持ち込んだ「オゴノリ」を、売ろうとした。刺し身のつまなどに使われる赤みがかった海藻だ。
 売り込みにバイクで九州一円を回った。電話帳を見ながら、全国の旅館や問屋に片っ端からダイヤルした。反応が良ければサンプルを届けた。
 販売先が徐々に広がった。注文に対応して、取り扱う海藻の種類が増えた。会社も大きくなった。
 「三陸沖のワカメがほしい」「もっと長持ちする海藻はないのか」。千差万別の顧客の声に、営業担当者は耳を傾けた。その声を持ち帰り、新たな商品につなげた。
 海藻は種類によって加工方法が違う。数種類を扱うだけでも大変だった。
 担当者が漁協などをこまめに回った。海藻の仕入れルート確立に加え、最適な加工方法などの情報も入手した。
 海藻自体に電気を通し、加熱・殺菌する装置も開発した。メカブなどが持つ独特の食感や、色味を損なわないように加工する。
 「海藻のことはカネリョウに聞けば分かる」。そう言われるまでになった。
                ■ ■ ■
 商売で大切なのは、良質の海藻を安定して仕入れることだ。仕入れ先は三陸沖や沖縄、韓国と国内外に広がる。
 メカブやモズクは毎年3~5月が最盛期だ。社員は藻(も)場(ば)が広がる沖縄諸島などの浜辺に連日、張り付く。そのとき限りではなく、社員は日頃から漁師との信頼関係を地道に築く。
 平成23年秋、高木氏の長男、良樹氏(56)が2代目社長に就任した。
 「海藻には無限の可能性がある。なんでもやってみよう」。就任後、良樹氏は社員全員を集めた朝礼で、こう呼び掛けた。
 言葉通り、社員は商品開発に励む。
 良樹氏の長男、良将専務(28)も開発に携わる。若い世代により多くの海藻を食べてもらおうと、アイデアを練る。
 そんな毎日から昨年、ヒット商品「海藻グラノーラ」が誕生した。プロの料理人向けの月刊誌「料理王国」が注目商品を選ぶ「料理王国100選2018」にも認定された。
 この商品は失敗から生まれた。当初、さくっとした食感の加工食品を目指した。だが、乾燥した海藻は粉状になり、手でつまめるような形にならない。
 研究開始から1年ほどたった。シリアルと蜂蜜などを混ぜて焼く「グラノーラ」にたどり着いた。
 コンブ、ワカメ、トサカノリといった海藻に、国産の大麦や黒糖を加えて作った。大麦は、阿蘇の良質なものを、八代市の大麦専門店「西田精麦」を通じて取り寄せた。
 熊本の地場企業として、平成28年の熊本地震からの復旧を支援しようという思いもあった。
                 ■ ■ ■
 海藻エキス入りの入浴剤は、ふとしたところにヒントがあった。
 良将氏は平成26年、シンガポールで開かれた商談会に、塩漬けした海藻を持ち込んだ。
 帰り際、通訳を担当した現地の女性に商品をプレゼントした。彼女はこう言った。
 「海藻を漬けた塩が気になる。海藻成分が染みこんで、肌によさそうです」
 帰国後、海藻エキスを練り込んだ入浴剤の開発に、取りかかった。
 世界市場にも打って出る。27年に海外の百貨店などと取引する部署を設けた。和食ブームもあり、販路は中国や米国など28カ国・地域に広がった。
 昨年、創業から50年を迎えた。9月24日、JR熊本駅近くのホテルで祝賀会を開いた。
 会場に集まった500人を前に、社長の良樹氏は「海にここまで育ててもらった。この先の50年、海藻という小さな市場で世界一の『グローバルニッチトップ企業』を目指す。これからも海藻に一生懸命です」 (村上智博)