諫早開門「無効」「正直ほっとした」有明海再生に期待

 
諫早湾干拓をめぐる司法判断の流れ

 「期待はしていたが、正直ほっとした」。干拓地の農家、荒木一幸氏(41)は、福岡高裁判決に安堵(あんど)の息をついた。

 「農業で生き残るには、大規模経営しかない」。熊本・天草から10年前、営農が始まったばかりの干拓地に入植した。一番の古株であり、諫早湾干拓環境保全型農業推進協議会の代表を務める。

 36ヘクタールの土地で、加工用キャベツを年2400トン作る。ここに来るまでは大変だった。

 土は粘り気があり、日照りが続けばガチガチに固まった。土の改良に、大量の草をすき込んだ。草は積み上げると、家の天井の高さにもなった。「設備投資に億単位をかけた」という。

 土には苦労したが、水の条件は良かった。潮受け堤防と干拓地の間に広がる調整池の淡水を使う。畑には約30メートルおきに蛇口があり、「ひねれば必ず水が出る。水不足にはならない」

 それだけに、開門を命じた平成22年の高裁判決はショックだった。

 開門すれば調整池に海水が入る。台風などで強い風が吹けば、干拓地に塩水が吹き飛び、塩害で土地も水も使えなくなる。そんな可能性がある。

 「その判決を菅直人首相(当時)がうのみにして上告せず、確定させた。あの行動から、開門をめぐる問題がごちゃごちゃしたんです。国の事業で営農したはずなのに、国に裏切られた気持ちだった」

 その後、政権交代があり、政府は、開門せずに和解を目指す方針へ舵を切った。この対応に安心した。

 メディアの一連の報道にも不満がある。

 「『漁業者VS営農者』という単純な構図で報じてきた。多くが開門派に立ち、その結果、営農者を悪者のように報じてきた。私たちは何も悪くはない」

 「開門派は不漁になったのは全て、堤防閉め切りのせいだと決めつける。だったら、ノリ養殖で使う酸処理剤の影響はどうなのか。国は、原因追及を進めてほしい」と語った。

 ただ、開門派が引かない限り、問題は尾を引く。

 「有明海が再生すれば、私たちの考えに、漁業者も納得するでしょう。農業も漁業も日本の食を支える産業です。こうして争うのはおかしいのです」