高齢者施設賠償責任を否定 岩泉浸水被害めぐり初弁論

 

 平成28年の台風10号の豪雨に伴う浸水被害により、岩泉町の高齢者施設「楽(ら)ん楽(ら)ん」で亡くなった入所者9人のうち6人の遺族計17人が、施設の運営法人に計約1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が19日、盛岡地裁(中村恭裁判長)で開かれ、施設側は請求棄却を求めた。

 訴状によると、施設側は同年8月30日午前9時ごろに「避難準備情報」が発令された時点で、入所者を避難させる義務があったのに怠り、川の氾濫で浸水、9人の入所者全員を死亡させたとしている。

 施設側は答弁書で「国や県が避難準備情報の意味合いを高齢者施設に周知しておらず発令時点で避難しなければならないとの認識は一般的ではなかった」と注意義務違反と賠償責任を否定。ただ道義的責任から被害者1人当たり100万円の弔慰金を支払うとした。

 口頭弁論後に原告側は記者会見を開き、母の八重樫チヤさん=当時(95)=を亡くした息子の信之さん(74)は「早く避難していれば、助かっていたはず」と唇をかんだ。その上で、「真相を明らかにしてほしい」と語った。

 八重樫さんが入手した施設関係者の行動表では、施設側は入所者の避難より車の移動を優先させていたという。原告側代理人の吉江暢洋弁護士は「車を移動させたのは、川があふれるとの認識があったからではないか。どの段階になれば入所者を避難させようと思っていたのか」と指摘した。