おいしいパンで地元に笑顔を 創業100年「オギロパン」営業再開 広島

 

 三原市皆実の創業100年の老舗パン屋「オギロパン」は、西日本豪雨による断水で一時営業を停止していたが、17日に再開を果たした。豪雨後の断水時期にもパン作りに欠かせない水を独自に調達し、パンの提供を続けたが、次第に確保が難しくなり営業停止に追い込まれていた。断水解除で危機を乗り越えた取締役の荻路(おぎろ)洋子さん(68)は「おいしいものを食べると、人は自然と笑顔になれる。オギロパンならではの味を大切にしていきたい」と再開を喜んだ。(児玉佳子)

 オギロパンは大正7年創業。60種類近くのパンを作り、とりわけコッペパンにクリームと砂糖などを練り込んだ「しゃりしゃりパン」が人気だ。地元住民らに長年愛され、本店のほか県内各地のスーパーなどでもパンを販売している。

 ところが、6日発生の西日本豪雨の影響で、パン作りに欠かせない水が断水。それでも、地元で食料品の物流が止まったため「手軽に食べられるパンが求められる」と、市内の断水していない地域の知人に水の提供を依頼。水をタンクに入れてトラックで何度も往復して運び、パン作りを続けた。

 豪雨の影響で道路が寸断され、パンを遠くまで配達できないこともあったが、市内のスーパーに回すなどして提供は続けた。

 本店では、ショーウインドーに並ぶパンを見かけた通行人らが「パンがある」と喜んで次々と来店。なかには「ありがとう」と涙して購入した女性もいたという。

 それでも断水の影響は日増しに深刻となり、ついに11日以降の営業断念を余儀なくされた。10日には通常200個ほどのパン製造量を10倍以上の1300個まで増やし、販売すると、あっという間に売り切れた。

 その後は徐々に市内の食料品の流通量も増え、店頭に商品が並び出した。

 店周辺は14日に断水が解除されたが、塩分濃度が高いこともあってすぐには使えず、ようやく17日に営業再開にこぎつけた。

 荻路さんは「一番苦しい時にパンを提供できて、老舗のパン屋として地元への役割は果たせたかな」と豪雨直後の危機的状況を振り返る。

 今年で創業100年のオギロパンは3月、荻路さんの夫で3代目の欣吾(きんご)さんを亡くしたばかり。

 荻路さんは「主人には何度も『この節目に営業できなくてごめんなさい』と謝って手を合わせました」と目をうるませ、「水の大切さを改めて実感しました。経験を生かして危機管理の徹底を図っていきたい」と再起を誓っていた。