JR久大線全線復旧 沿線歓迎も29年度「輸送密度」は被害路線で大幅減

 
日田駅に到着した「ゆふいんの森」。線路両脇のホームに大勢の住民が出迎えに訪れた

 昨年7月の九州北部豪雨で被災し、一部区間の不通が続いていたJR久大線(久留米~大分)が14日、全線復旧した。福岡県南部と大分を結ぶルートの復活を、沿線各地で地域住民が祝った。ただ、JR九州管内では、西日本豪雨でも3路線が被災した。相次ぐ災害と復旧費用が、ローカル線維持の重荷となっている。 (九州総局 高瀬真由子)

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 観光列車「ゆふいんの森」が、この日午前10時45分ごろ、大分県日田市の日田駅に到着した。

 ゆふいんの森は、久大線を通る人気観光列車だが、昨年の豪雨災害以来、迂回(うかい)ルートで運行していた。復旧を待ちわびていた約1千人の地域住民が、旗を振って、一番列車を出迎えた。

 広瀬勝貞大分県知事は「観光シーズンの夏休みに間に合って本当によかった」と期待を示した。原田啓介日田市長は「観光でも生活面でも大変な1年だった。復興に向け全力で動きたい」と歓迎した。

 沿線に住む福嶋スズヨさん(67)は「朝5時半ごろ列車の音が聞こえ、ようやく戻ったんだと思った。地域に活気が出る」と喜んだ。

 JR九州の青柳俊彦社長は、博多駅からゆふいんの森に乗車し、日田駅を訪れた。青柳氏は「つながってよかった。災害に絶対負けないという思いで、これからも立ち向かいたい」と語った。

 久大線は、地域住民の利用だけでなく、ゆふいんの森や豪華寝台列車「ななつ星in九州」も走る。美しい景観が人気を集める路線だ。沿線には由布院温泉など観光名所がある。

 だが、昨年の豪雨災害で、橋の流出など11カ所で被害を受けた。特に、日田市の光岡-日田間は、不通が続いた。復旧費は17億円だった。

 全線復旧で、地元では観光業などの活性化へ期待が高まる。JR九州は「久大本線、ぜんぶつながるプロジェクト」と題し、自治体と連携して、再開を盛り上げるイベントを開く。

 同じ九州北部豪雨で甚大な被害を受けた日田彦山線は、添田(福岡県添田町)-夜明(大分県日田市)で不通が続く。

 JR九州は、日田彦山線の復旧費を70億円と試算した。「自社単独での復旧は困難」として、沿線自治体と復旧に向けた協議をしている。

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 鉄道事業は、災害との戦いでもある。

 九州ではこれまでも、天災によって鉄道網が大打撃を受けた。特に、豊肥線や久大線といった険しい山間部を通る路線は、被害に遭いやすい。

 平成28年4月の熊本地震では、JR九州の設備被害と、売り上げ減が計175億円にも達した。このうち、熊本と大分を結ぶ豊肥線は、いまだに一部区間で復旧が見通せない。

 一方、人口減少を主因に、ローカル線利用者は、JR九州発足時の昭和62年度に比べ、3分の1に減少した。

 平成30年3月期決算の鉄道事業(単体)は、会計処理に伴う費用軽減分を考慮しなければ、20億円の赤字だった。管内にある路線の大半が、赤字とみられる。

 JR九州にとって、ローカル線維持は、平時から大きな経営課題になっている。そこに天災による被害、復旧費がのしかかる。

 復旧負担軽減へ国も動いた。今年6月、被災路線の復旧支援の対象を、黒字鉄道会社に広げた改正鉄道軌道整備法が成立した。「被災路線が過去3年間赤字」などの条件を満たせば、国の支援を受けられる。

 ただ、青柳氏は「復旧を考えるに当たり、路線が将来にわたって持続可能であるかが、一番のポイントだ」との認識を示している。多額の費用を投じて復旧しても、路線の赤字が続けば、いずれ維持できなくなる。

 全国では、被災後に鉄道会社の負担が軽減する運営手法に変わった例がある。23年の福島・新潟豪雨で被災したJR東日本の只見線は、福島県が線路などを保有し、JRが運行する「上下分離方式」での再開を目指す。岩手、宮城両県を結ぶ大船渡線と宮城県の気仙沼線は、東日本大震災後、バス高速輸送システム(BRT)に切り替えた。

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 JR九州は、九州新幹線と九州7県を走る在来線に関し、平成29年度の1キロ当たりの1日平均乗客数である「輸送密度」を公表した。29年7月の九州北部の豪雨で被災し、一部区間が不通となった日田彦山線と久大線の不通区間近くで、減少が目立った。利用が低迷する地方路線では大幅な増加が見られず、路線存続には需要を喚起する施策が課題となる。

 豪雨の影響で添田(福岡県添田町)-夜明(大分県日田市)の不通が続く日田彦山線では、添田から近い田川後藤寺(福岡県田川市)-城野(北九州市)の輸送密度が前年度の2595人から2514人に減少。日田市内で不通となった久大線でも日田-由布院(大分県由布市)が前年度の2027人から1340人へと大幅に減った。

 輸送密度が最も低かったのは宮崎、鹿児島両県を走る吉都線の474人。次いで熊本、宮崎、鹿児島の3県を結ぶ肥薩線が507人。いずれも前年度からは増えたが、増加率は小幅だった。

 前年度との比較が可能な18路線のうち、九州新幹線を含む10路線が上昇し、8路線が低下した。