【ズーム東北】岩手発 皇后さまの御歌碑 遠野市民の熱意で実現 - 産経ニュース

【ズーム東北】岩手発 皇后さまの御歌碑 遠野市民の熱意で実現

「皇后陛下御歌碑」(岩手県遠野市提供)
平成25年7月に仮設住宅で避難生活を余儀なくされている被災者を励まされた天皇、皇后両陛下=岩手県遠野市
 民話の里、岩手県遠野市に皇后さまゆかりの新たな名所が誕生する。市を代表する宿泊施設「あえりあ遠野」前に建立された「皇后陛下御歌碑(みうたひ)」がそれだ。15日に除幕式が開かれ、正式にお披露目される。御歌碑の建立には市民の強い熱意が込められていた。(石田征広)
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 皇后陛下御歌
 遠 野
 何処(いづこ)にか
 流れのあらむ
 尋(たづ)ね来し
 遠野静かに
 水の音する
  
 御歌碑に刻まれているのは皇后さまが平成25年に詠まれた「遠野」。天皇、皇后両陛下は東日本大震災の被災者を励ますため何度となく被災地に足を運ばれていた。この年の7月4、5日には岩手県の三陸南部の被災地を回られた。
 遠野市は三陸沿岸から内陸に約40キロ入った遠野盆地に中心市街地がある。両陛下は震災後に三陸沿岸の津波被災地の救援基地となった遠野市にも立ち寄り、市内の仮設住宅で避難生活を送る被災者を励まし、あえりあ遠野に宿泊された。
 ◆きっかけは26年元日
 御歌碑建立のきっかけは平成26年の元日まで遡る。天皇、皇后両陛下が25年に詠まれたお歌のうち8首を宮内庁が発表した。その中の1首が皇后さまの「遠野」だった。これが多くの市民の脳裏に残った。
 「あえりあ遠野近くを流れるせせらぎがあります。来内(らいない)川です。皇后さまは夜の静けさの中でせせらぎの音を聞かれたと思います。遠野をよく表現されていると感心しました」。こう話すのはカクタ設計の角田幸四郎会長(88)。
 当時、現職の遠野市議だった菊池民弥氏(79)は「遠野を思って詠んでいただいたお歌をただ埋もれさせたくなかった」と、26年9月定例市議会の一般質問で、お歌を後世に伝えるものをつくる考えはないかと市の考えをただした。
 「まだ時期尚早かなという感じでした」と菊池氏は当時を振り返る。しかし、天皇陛下が28年7月に譲位の考えを示されたことで、建立の機運が一気に盛り上がり、市民と市内の企業・団体からの協賛金で御歌碑を5周年をめどに建立しようと、市民有志の実行委員会が同年8月に発足した。角田氏が会長、菊池氏が事務局長に就任。29年9月から800万円を目標に市民は1世帯1口1000円、市内の企業・団体は1万円以上を目安に協賛金を募ったところ、年内に全世帯数のほぼ6割に当たる6130世帯と157の企業・団体から予想を上回る約881万円が集まった。
 ◆宮内庁からの許可
 だが、御歌碑建立にはハードルがもう一つあった。
 歌碑に「遠野」の題字を刻む許可を宮内庁から取り付けることだった。当初、宮内庁は「題字を入れたものは全国にもほとんど例がない」と難色を示していたからだ。ここで市が動いた。
 「題字が入ることで御歌碑は遠野市にとって大きな財産になる」(鈴木惣喜総務企画部長)と、県を通じて宮内庁に働きかけた。昨年12月から事前調整に入り、承認通知が宮内庁から届いたのは今年5月だった。粘り強い働きかけで「最大限の譲歩をいただいた」と同部長。
 御歌碑は幅3・15メートル、高さ1・5メートル。皇后さまのお歌を刻んだ縦0・9メートル、横1・5メートルの盛岡市玉山産の花崗(かこう)岩「姫神小桜」がはめ込まれている。建立費は約667万円で、協賛金の残りは管理運営費などに充当されるという。除幕式は15日午後1時半から、あえりあ遠野の中ホールで開かれ、建立までの経過説明などがあり、御歌碑前に移動、本田敏秋市長らも加わって除幕することにしている。