旧陸軍航空将校の精神語り継ぐ 松江護国神社禰宜が「留魂」執筆 貴重な資料ひもとき、全2巻発刊 - 産経ニュース

旧陸軍航空将校の精神語り継ぐ 松江護国神社禰宜が「留魂」執筆 貴重な資料ひもとき、全2巻発刊

 第二次世界大戦で死闘を繰り広げた旧日本陸軍航空将校らの戦いぶりや思いなどをつづった書籍「留魂(りゅうこん)」を、松江護国神社(松江市)の禰宜(ねぎ)を務める工藤智恵さん(52)が執筆し、同神社が発行した。遺族や戦友らから託された貴重な資料を丹念にひもとき、関係者を取材。全2巻の発行を終えた工藤さんは「若き士官たちが受けた精神教育、声にならなかった声を後世に伝えたい」と願っている。
 工藤さんが取り上げたのは「陸軍航空56期生」。陸軍将校の育成組織「陸軍士官学校」の分校に当たる陸軍航空士官学校の昭和18年卒業生を指し、初期に編成された特攻隊の隊長は大半が彼らだったという。
 ある時、56期生の遺族から士官学校時代の日記を託され、その記述を読んで胸を熱くした。平成20年頃を境に各地の戦友会がどんどん解散に向かう中、陸軍航空56期生の戦友会「紫鵬会」が会報を発行するなど活動を続けていることを知り、同会に連絡を取った。その後、会報が終刊となったことなどもあり、関係者から56期生に関する膨大な資料が送られてきた。
 それらを基に、主としてフィリピン・レイテ戦で戦死した56期生の特攻隊長10人を取り上げた第1巻を平成28年12月に発行した。
 さらにその後、会員らが高齢で次々と亡くなるなど戦争体験の風化の加速度を肌で感じ、「生き残った方々の話は今しか聞けない」という焦燥感にかられた。1巻では掲載できなかった将校たちの姿を描くとともに、生き残った同期生たちの思いも紹介しようと続編の制作を決意。このほど第2巻を刊行した。
 2巻では、沖縄戦などを中心に戦死した56期生7人と生き残った同期生らの回想を掲載した。
 「陸士卒業生というと、現代では『頭の固いエリート』という固定観念など悪玉扱いされているように思うが、残された資料や証言などから伝わってくるのは強く優しく、平和を願う姿」と工藤さん。単に自分を鍛えるだけでなく、指揮官として常に部下を思いやる心が求められた士官学校教育に今こそ光を当てるべきだと考え、「後に続く人たちをひたすら信じて死んでいった将校たちの思いに報いたかった」。
 そんな思いで執筆した「留魂」は、紫鵬会員たちから感謝されただけでなく、多くの陸上自衛隊幹部にも読んでもらったという。工藤さんは「神と人をつなぐ役割を担う神職として、死力を尽くした英霊の思いを現代の人たちに伝えられたのはうれしい」と喜ぶ。
 書名の「留魂」は、56期生が卒業に際し、決意を記した書籍「留魂録」から取って命名した。1巻は2千部、2巻は1700部を発行し、いずれも松江護国神社で、1冊千円で販売している。