イージス・アショア配備めぐり揺れる山口 「北朝鮮より米軍が迷惑」声高な政治主張

 
山口県萩市で開かれたイージス・アショアの説明会。質疑応答で会場に向けて「演説」を始める人もいた=19日

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備候補地となった山口県が、揺れている。地元自治体が開いた説明会では「北朝鮮より米軍が迷惑だ」といった政治的主張が相次ぎ、農業や畜産業への影響など住民の暮らしに密接した声はかき消された。極端な政治的主張ではなく、住民の「声なき不安」をすくい上げ、配備の議論を深める必要がある。(大森貴弘)

 「イージス・アショアは必要ありません。1910年に日本は韓国を植民地化し、何万人を強制動員した。拉致問題など比べものにならない…(中略)北朝鮮よりも米軍の方が迷惑だ。最近は歴史を逆に走っているような気がしております」

 「言葉遊びはやめましょう。これはミサイル基地だ。敵対的な基地の拡大の前に、日米地位協定の廃止を働きかけ、北朝鮮と平和条約を結ぶべきだ。政府は、戦争を阻止する意思がない!」

 19日夜、山口県萩市の中心部で開かれた住民説明会で、一部の出席者が、司会の制止を振り切り、政治的な持論を延々と述べた。220人の出席者からは、「憲法守れ!」などのヤジも飛んだ。

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 政府は昨年12月、イージス・アショアの導入を閣議決定した。北朝鮮が開発を進める弾道ミサイルを念頭に、防衛力強化が目的だ。防衛省は、秋田と山口両県への配備を想定する。山口県では、陸上自衛隊むつみ演習場が候補地とされる。

 今月17日から3日間、むつみ演習場のある萩市と阿武町で、説明会が開かれた。防衛省の担当者は、レーダー用電波の影響や、攻撃の標的となる可能性の増大など、住民が抱く不安について、心配はないと説明した。

 だが、その後の質疑応答は、一部のグループが政治的主張を繰り返し、冷静な議論ができたとは言いがたかった。

 会場前では、「『イージス・アショア』配備計画の撤回を求める住民の会」が、「朝鮮半島の平和に向けた動きに逆行する」などと書かれたビラを配った。

 同会は、岩国基地(山口県岩国市)縮小などを訴える自治労系の山口県平和運動フォーラムの支援を受けてできた。その経緯から、主張はさながら反基地運動の様相を呈している。

 同会代表の森上雅昭氏(65)=萩市=によると、萩市の住民説明会では、質問者の半数が同会のメンバーだったという。森上氏は「私たちはイージス・アショア配備撤回の1点を求めているが、他の主張を合わせて2点も3点も求める人もいた。そこは今後、整理をしていきたい」と述べた。

 反対派が反対を訴えるのは当然かもしれないが、議論の場を独占するのは大きな問題だ。

 説明会に出た萩市の漁師、上村昭乃さん(80)は「私も反対といえば反対だけど、国を守るために仕方ないかな、との思いもある。説明会では、(演習場)近くの水源など、私たちの暮らしにどんな影響があるか、もっと地に足の着いたことを聞きたかった」と語った。

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 イージス・アショア配備計画に対し、山口県の村岡嗣政知事や萩市の藤道健二市長は、選考の過程や、適地とされる根拠など、詳細な説明を求めた。

 防衛省は6月15日、全国をカバーできる▽遮蔽物がなくミサイル探知に支障がない▽安定した電気・水道の供給-など、候補地とした根拠を示した。

 中国四国防衛局の赤瀬正洋局長は「住民や自治体には、ミサイル防衛の必要性とともに、より具体的、科学的な説明を今後も続けていく。説明会という形だけで良いのかも含め、対応したい」と語った。

 今月12日の米朝首脳会談で、北朝鮮は半島の非核化に合意した。

 だが、依然として多数の核弾頭と弾道ミサイルを保有し、いつでも発射できる態勢を保持している。状況は何一つ変わっておらず、イージス・アショアの早急な配備は欠かせない。

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 山口県などは21日、小野寺五典防衛相が22日、県庁を訪問すると発表した。イージス・アショアの配備について、村岡嗣政知事や、萩市の藤道健二市長らに理解を求めるとみられる。