建築科高校生、復興公営住宅で調査 生の声でさらなる住環境改善へ 福島

 

 福島県いわき市の復興公営住宅「勿来(なこそ)酒井団地」で、地元の県立勿来工業高校建築科の生徒7人が、アンケートを行った。これまで、団地内に鳥の巣箱を設置するなど住み心地向上に取り組んできた同校。暮らす人の生の声を集めて、さらなる住環境改善につなげようとしている。

 この団地は、主に東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされた住民のために建てられた。今年2月末から居住できるようになり、全町避難が続く双葉町民らが暮らしている。診療所や集会所なども併設されている。

 ◆鳥の巣箱を設置

 同校の生徒は今年2月、団地内の戸建て住宅20戸が並ぶエリアで鳥の巣箱5個を設置した。場所は家と家の間にある共有スペース。県から団地建設にあたって、「高校生のアイデア」を求められたのがきっかけになった。地上から2メートルほどの場所に巣箱を置き、そばに餌入れも用意。家の近くに鳥が寄ってくるように工夫した。

 設置の狙いは住民の交流促進だ。長い避難生活や、居住環境の変化でコミュニティーが分断された中で、住民のつながりを再生することは容易ではない。

 「鳥の巣箱を置くことで、外に出てくれば『あの家にはこの人がいる』と分かるし、会話の糸口にもなる」

 同校の熊田尚教諭は説明する。

 前年度に巣箱を設置した生徒たちは3月に卒業。次の代の生徒らが効果の検証と、公営住宅の実態を調べるために今月8日、直接住民に話を聞くことにした。

 アンケート用紙を携えた生徒は午前10時半から聞き取りを始めた。最初に訪ねたのは60代の女性の自宅。生徒2人がアンケート用紙を手に、女性に日当たりや風通し、ほしいものなどについて質問を始めた。鳥の巣箱のことを尋ねると「見たことがない」。初めての調査を体験した生徒ははにかみながら「緊張した」と話した。

 次の訪問先は50代の男性宅。「あまり見ないけれどセキレイの姿を見たことがある」と話した。住み心地を聞かれると、団地前に広がる水田に目をやり、「目の前が田んぼで、双葉を思い出す。いいね」と笑顔を浮かべた。

 70代の男性は「若い人が来てくれると楽しいね」と、高校生の訪問を喜んでいる様子。「住み心地はいい。ただ、集会所にはいつも鍵がかかっていて、みんなが集まれる場所がないかもしれない」と語った。鳥が好きだというこの男性は「鳩ぐらいしか見ない。巣箱があまり低いと、鳥は人を怖がってこない」とアドバイスしていた。

 ◆さまざまなヒント

 この日、話を聞けたのは5人。熊田教諭によると、住み心地については「おおむね良好という反応だった」という。一方で、「買い物する場所がない」「近所付き合いがあまりない」という声も聞かれた。

 高校生にとって初めての取り組みとなった「巣箱」についても、なぜあまり鳥が寄ってこないのか、課題が見つかった。熊田教諭は「今回の経験を通して、生徒が学んでくれれば」と話した。

 実際に団地内を歩いた生徒は「ポストがない。あったほうが便利ではないか」「街灯がないので夜は暗くなると思う」と、さまざまな住環境改善のヒントに気がついたようだった。今後は調査結果をもとに、新たな取り組みにつなげたいという。住民にも年2回のペースで追跡調査をしていきたいという。

 3年の中西貴大さん(17)は「もっと人に住んでもらえるようにしたい。復興住宅が勿来の活性化につながるようにしたい」。まだ空きが目立つ団地を見つめ、表情を引き締めた。(内田優作)