硫黄山噴火から1カ月 稲作前に水確保が課題 国や地元、対策急ぐ - 産経ニュース

硫黄山噴火から1カ月 稲作前に水確保が課題 国や地元、対策急ぐ

霧島連山・硫黄山の噴火後、白濁した近くの川。土のうで流れが止められた=宮崎県えびの市
 宮崎、鹿児島県境に位置する霧島連山・えびの高原(硫黄山)が250年ぶりに噴火し、19日で1カ月となった。4月下旬を最後に噴火は確認されていない一方、近くの川は白く濁り、高濃度の有害物質が検出された。本格的な稲作シーズンに入るのを前に、不安を募らせる農家に対する支援態勢の構築が急務となる。
 「まるで牛乳のようだ。この先、生活していけるのだろうか」
 4月19日の噴火後、硫黄山近くを源流とする長江川は白濁したままで、住民らは初めて見る光景に不気味さを感じている。
 宮崎県の水質調査では、最大で環境基準の約200倍のヒ素などが検出された。鹿児島との県境付近で合流する川内川でも、強い酸性を示す数値が出た。
 大量の魚の死骸が発見されたこともあり、両県は周辺の井戸水や湧き水を飲まないよう呼び掛けた。
 流域3市町の1千戸以上の農家は田植え前に今季の水稲栽培を断念した。
 約5ヘクタールの作付けをやめた宮崎県えびの市の小畑武志さん(67)は荒れた田んぼを見ながら、「風評被害につながらないためにも、涙をのんで今年は作らない。自然には勝てない」と肩を落とした。
 その後、えびの市の水質調査で、長江川と合流していない小川などでは安全性が確認された。そこで、同市は17日、農家の一部について稲作中止の要請を撤回した。とはいえ、農家にとり十分な水量を確保できるか、予測するのは容易ではない。それだけに、行政サイドの動きに対し、農家側は稲作を続けるべきなのか、難しい判断を迫られている。
 一方、火山の研究者の間では噴火のメカニズムや、周辺の川の水から検出された有害物質などについての解明が進む。
 このうち、火口周辺の現地調査に入った九州大の松島健准教授(地震学・火山学)は、有害物質について「火山との因果関係があるのは間違いないようだ」と指摘する。
 松島氏によると、硫黄山の地中の岩盤にはヒ素などの硫化物が堆積している。
 「それがマグマに熱せられ、地下水とともに火口付近の複数の穴から泥や水となって噴き出し、川に流れ込んでいる」と推測する。
 気象庁などによると、霧島連山の地下のマグマだまりは3月以後、爆発的噴火を繰り返す新燃岳と同じとされ、現在も膨張を続けている。幅は10キロから15キロ、厚さも5キロを上回るとされており、大規模だ。
 火山活動には終息の気配がない。硫黄山周辺では噴煙が上がる。火山性地震や火山性微動はこのところ1日に数回と少なくなったが、気象庁は噴火警戒レベル2を継続している。
 そんな中、えびの市は梅雨に備えて、泥水に含まれる有害物質を沈殿させて取り除く「ため池」を建設するといった応急対策を急ぐ。長江川は上流に土嚢(どのう)を積み、せき止めた。
 農林水産省の礒崎(いそざき)陽輔副大臣は今月14日に現地を視察し、国として営農対策に乗り出す考えを表明した。