出雲の平野勲記念館、老朽化で惜しまれつつも閉館 収蔵品は市内の学校などへ

 

 出雲駅伝のポスター画などで知られる島根県出雲市出身の画家、故平野勲さんの作品を展示してきた同市の「平野勲記念館」が閉鎖された。平野さんが戦後の一時期暮らした寺院離れを地元の有志が改修し、記念館として運営してきたが、築90年が過ぎて傷みが激しく、改修や移転もかなわず10年半を経てその歴史に幕を下ろした。

 平野さんは、大正12年生まれ。美術教員勤務などを経て、漫画家を志し昭和36年に上京。全国各地の祭りを描いた「日本の祭り十二カ月」で日本漫画家協会賞を受賞するなど活躍した。同市で開かれる出雲駅伝では、第19回大会から平野さんの絵をポスターに採用。選手や観衆など大勢の姿を緻密に温かく描く作風が人気を呼び、平成22年に亡くなって以降も引き続き、平野作品がポスターに使用されている。

 記念館の開館は、平成19年10月。西光寺の離れが空き家になったため、ゆかりの地を顕彰施設にしようと有志が働きかけ、寺院側も無償で離れを貸し出した。

 有志らは運営委員会を組織し、記念館を拠点に平野さんの顕彰活動や「平野勲漫画コンクール」の開催などに取り組んできた。しかし、館の老朽化が進んで耐震面の不安も増す一方、改修や移転などもかなわなかったため、やむなく閉鎖を決断した。

 約千点にのぼる収蔵作品は、所有者の遺族が出雲文化伝承館をはじめ、市内の小・中学・幼稚園や西光寺などに寄贈。記念館の設立や維持・管理に当たった運営委員会の中村吉雄委員長は「記念館を維持できないのは残念だが、作品は出雲の地に残り続ける」と感慨深げ。平野さんの長女、多胡文子さん=青森県三沢市在住=は「記念館はなくなっても、父の作品がいつまでも島根の人たちに見てもらえるのはありがたい」と話していた。