青森発 青森市、20億円寄付の使途に賛否両論

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 青森市内に住む個人から昨年末、市に寄付された20億円の使途に注目が集まっている。寄付者の意向に沿って、体育施設(アリーナ)の整備や食育事業に充てたいとする小野寺晃彦市長の方針に対し、市民の間には「善意を尊重するべき」「ハコモノの維持費のツケが回ってくるのではないか」など、賛否両論が渦巻く。28日から始まる定例市議会一般質問でも議論が交わされるものとみられる。(福田徳行)

 ◆短命市返上目指す

 市によると、昨年12月26日に市内の個人から短命市返上を目指し市民の健康作りとスポーツ振興に役立ててほしい、との趣旨で寄付の申し出があった。本人の意向で氏名や年齢、性別、職業などは公表されていない。

 平均寿命が男女とも全国で最も短い「短命県」の青森県にあって、同市の男性は県内40市町村で最下位で、市民の健康増進は市政課題のひとつだ。

 小野寺市長が使途について寄付者と複数回、意見交換する中で、市中央部に位置する青森操車場跡地にスポーツやコンサートなどの催しに利用できるアリーナの建設構想が出てきたという。

 市によると、総事業費は70億~80億円規模で、収容人数は2500~3千人程度を想定。市は来年度当初予算案にアリーナプロジェクト推進事業として有識者会議開催などの経費を盛り込んだほか、子供の食育環境の整備費も計上した。さらに、寄付金の使途を明確化し、賛同者から寄付を募るため「市次世代健康・スポーツ振興基金条例」の制定を目指し、定例市議会に条例案を提案している。

 突然の20億円寄付。市民の間にはさまざまな意見が渦巻く。

 「想像もつかない額だが、せっかくの善意。市民の健康作りに役立ててほしい」(30代女性会社員)、「寄付なのだから篤志家の意向を尊重するべき」(20代男子大学生)など、市の方針に賛同する声がある一方、維持コストを懸念する意見も。50代の男性公務員は「寄付金を除いた残りの50億~60億円をどう捻出するのか。財政が厳しい中、新市庁舎の建設費を圧縮しておきながらアリーナの維持費が市民に跳ね返ってくるのではないか」と不信感を募らせる。負担軽減に関し、小野寺市長は「国庫補助金の確保など財源を工夫し、できるだけ市民の負担を少なくしたい」と話す。

 ◆体育施設整備の方針

 市は「箱モノを増やすのではなく、市民体育館の建て替え」(小野寺市長)との位置付けで、平成37年の国体に向け、老朽化が著しい市民体育館の代替施設として建設する方針。しかも、雪国とあって「冬でも体を動かせる環境を整えたい」(小野寺市長)との思いもあるが、同市に限らず短命県の要因は運動不足以外にも塩分の過剰摂取、飲酒、喫煙が大きく起因しているのは紛れもない事実。これらの改善は県内全体の長年の課題だ。

 市内には県内屈指のコンサートや大規模な催事場「リンクステーションホール青森」(市文化会館)のほか、コンサートも可能な「盛運輸アリーナ」(県営スケート場)、新県総合運動公園にある「マエダアリーナ」といった体育施設があるが、市営のスポーツ施設は市民体育館だけ。とはいえ、着実に進む人口減少、少子高齢化といった現状の中で施設の妥当性やランニングコストなど、市民生活に直結する問題に対して分かりやすい説明が求められる。

 市民の健康増進に、という厚志に応えるためにも、さらには後世に性急な結論と揶揄(やゆ)されないためにも市議会、有識者会議には将来を見据えた幅広い議論を望みたい。

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【用語解説】青森操車場跡地

 県と市が平成10年に国鉄清算事業団から取得。面積は約21・2ヘクタールで県が約7・6ヘクタール、市が約5・2ヘクタール、市土地開発公社が約8・4ヘクタールを保有。15年から自由運動広場(市保有分)と多目的芝生広場(県保有分)を「青い森セントラルパーク」として暫定的に開放。市は22年に県とともに低炭素型モデルタウン事業を策定したが翌年、防災機能を持つ公有地として管理する請願が市議会で採択され、事業は中止に。以後、具体的な取り組みは進んでいない。