秋田発 新サッカースタジアム、具体性なく 人口減で施設維持課題

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 サッカーJ3で初優勝したブラウブリッツ(BB)秋田だが、J2昇格の条件となる新スタジアム整備の行方が見えない。秋田経済同友会(秋田市)は国際会議やコンサートも開ける大型の多機能施設を提案。ただ100億円以上という建設費の財源や運営主体に関する議論は進まず、国などの支援を当てにした「ハコモノ造り」を想定しているふしがある。人口減少の進む秋田で維持できる施設は造れるのか。(藤沢志穂子)

 有識者らによる県の「スタジアム整備のあり方検討委員会」が9日にまとめた最終報告は秋田市の市街地に建設、行政主導で建設計画を進め、運営では民間の資金・運営能力も活用すべきだとした。BB秋田の岩瀬浩介社長は「(効率性など)数字だけでは計れない効果がスタジアムにはある。存在が街の誇りになるようにしたい」と期待、6月までにJ2ライセンス取得をJリーグに申請する意向だ。

 ◆J2ライセンス条件

 J3は年間1位と2位になればJ2に自動昇格するが、J2ライセンス保有が条件で観客1万人以上を収容できるスタジアムが必要だ。現在の本拠地「あきぎんスタジアム」(秋田市)の収容人数は約5千人。そのため新スタジアムは秋田市の八橋地区や秋田大学周辺の建設を想定、工事中は、秋田市の八橋陸上競技場を改修して使用する方向が固まりつつある。

 スタジアムは本場の欧州で、サッカーをエンターテインメントと考え、街のランドマークとして「観(み)る」「魅せる」を重視。地域の企業間をつなぐビジネス拠点かつ多機能複合施設として利益を生み、地域の防災拠点ともなる考え方が定着してきた。では秋田に合った施設とは何か。

 秋田経済同友会は昨年12月、スタジアムを覆う可動式の屋根付き4階建て、建築面積が約2万2千平方メートル、観客席が最大1万5千席とJ1基準も満たす大型施設案を提案した。イベント開催に加え防災やスポーツの拠点とする。経済波及効果は建設費110億円を含め170億円、年間20億円の経済効果を見込んでいる。ただこの試算は、サッカー1試合当たりの観客動員数を5千人と、直近の実績の倍以上に見積もるなど「見通しが甘い」との見方がある。

 ◆北九州市、山形では?

 この案に近いのが、J3ギラヴァンツ北九州の本拠地として29年2月にオープンしたミクニワールドスタジアム北九州(北九州市)だ。スタンド部分の屋根付きで建設面積は約2万2千平方メートル、観客席数は約1万5千席。建設費の約100億円はスポーツ振興くじ(toto)の助成で30億円、残る70億円を市債でそれぞれ賄った。

 北九州市の人口は約96万人と秋田県全体に匹敵。スタジアムはJR小倉駅から徒歩7分と交通至便な場所にある。それでも運営は「楽ではない」(市スポーツ振興課)。ギラヴァンツの観客動員は、年間16試合で約9万6千人と「目標は上回った」(広報)が成績は9位と不振だった。

 各種イベントを含む入場者数は12月末時点で18万6千人。1月までの年間目標は21万人と、達成は厳しい。市は年間1億5千万円の維持費を拠出、チームにも同6千万円を支援するが、北橋健治市長は見直しも示唆している。

 一方、J2のモンテディオ山形(山形県天童市)は昨年9月、新スタジアムの整備に向け建設・運営の主体となる新会社を設立した。地元紙やコンサルティング会社6社、山形銀行など3銀行が出資し4月に基本計画の策定に着手、2年後の9月に建設場所の決定を目指す。山形市と天童市が誘致に前向きという。

 秋田の現時点の検討は、山形のような経済界の協力体制や運営主体などの点で具体性に欠け、当初から公的支援を前提としているふしがある。具体化は近く発足する県の別の検討組織に委ねられるが、大都市圏の北九州市ですら苦戦する運営が、人口減少の秋田で成功するのか。佐竹敬久知事は「身の丈のものが望ましい」と話すものの、10年、20年後も運営を維持できる施設のあり方を、改めて考えていく必要がある。