秋田発 対北朝鮮の最前線 問題意識、積極的な発信必要

年の瀬記者ノート

 秋田ではこの1年、「日本における対北朝鮮の最前線」と意識させられる事態が相次いだ。男鹿半島沖合への度重なるミサイル落下で、政府は3月、男鹿市で国内初の住民避難訓練を実施。11月には由利本荘市に北朝鮮籍の木造船が漂着し8人を保護、12月には弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備が閣議決定され、秋田市が候補地になった。地方自治体では限界のある国際問題にどう向き合うかが問われている。(藤沢志穂子)

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 海上保安庁のまとめによると12月25日現在、県に漂着・漂流した北朝鮮からとみられる木造船は15件(全国で99件)と、この5年間で最高。遺体は17体(同31体)、保護された人は8人(同42人)と、全国でも相当数を秋田が占めている。

 北朝鮮から主に日本海沿岸で相次ぐ漂着・漂流は、日本海有数の漁場とされる「大和堆」での違法操業が目的との指摘がある。国連の制裁決議をかいくぐり、燃料を調達して木造船で出航、漁で得たイカなどを国内の食糧不足の改善に活用すると同時に密売し、外貨を稼いでいるとの見方もある。

 ■漂着船に自治体苦慮

 11月以降、船や遺体が漂着した由利本荘市や男鹿市の海岸沿いにはこれまで、ハングルが書かれた漂流物が多く漂着していた。由利本荘市に住む建設業者は「いつ船や遺体が来てもおかしくない場所だった。すでに工作員や武装集団が密入国している可能性もある。今後、北朝鮮の体制が崩壊して、難民が押し寄せてきたらどうすればよいのか」と表情を曇らせる。

 木造船や遺体などの漂流・漂着物は原則、警察と海上保安庁が検分し、所属や身元がはっきりしない場合は地元自治体に処理が委ねられる。各組織は前例のない事態に苦慮した。それを物語るのが11月末、由利本荘市の海岸に、漁師8人とともに漂着した木造船が行方不明となった出来事だ。

 11月23日深夜、漂着した木造船は同24日、悪天候のため、秋田海上保安部と県警の協議の結果、移動が見送られた。同日夜から25日未明にかけ、県警の監視は係留施設周辺の警備が中心で、船を照らして見張っていたわけではない。25日朝になって流されたことが発覚。実況見分を前に、貴重な物的証拠を失った責任は重い。漁師8人を保護した県警由利本荘署も、処遇に戸惑う様子がみてとれた。

 男鹿市の宮沢海水浴場に11月26日、打ち上げられた北朝鮮籍とみられる木造船は、見つかった8遺体の検分後、男鹿市に管理が委ねられ、一時的に海岸に放置された状態となった。記念撮影に訪れる住民もおり、「また流されてしまうのでは」との声も聞かれた。「管理がずさん」といわれても仕方ないだろう。

 ■負担ますます重荷に

 木造船は解体して埋め立てられ、遺体は荼毘(だび)に付されて、市が委託する寺に遺骨が安置されている。こうした負担も今後ますます重荷になりそうだ。

 環境省は12月22日、北朝鮮からとみられる木造船を回収・処理する自治体への財政支援を拡充すると発表した。国の補助率をかさ上げするなどして、自治体の負担を実質ゼロにする。

 今の秋田県には「対北朝鮮の最前線」としての問題意識を積極的に発信し、政府に対応を働きかける必要がある。北朝鮮から難民や工作員、武装集団が到来した場合、水際でどう対応すべきか。イージス・アショア配備の候補地とされる秋田市の陸上自衛隊新屋演習場周辺で「かえって北朝鮮のミサイルに狙い撃ちされる」といった不安の声にどう答えるのか。政府と連携を密にした対策が日本の北朝鮮政策の基本線となる。