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【志らくに読ませたい らく兵の浮世日記】「健康落語」の立川らく朝兄さんが亡くなった

立川らく平
立川らく平

 立川らく朝という兄弟子が亡くなった。立川志らく一門の先輩で、67才だった。師匠の志らくよりも年上だ。もともとは内科医で、46才で入門して落語家になったという変わった経歴の兄弟子だった。

 私が入門した頃、らく朝兄さんは前座を卒業して二ツ目という身分で、やがて何年か後に真打に昇進した。私ともずいぶん年が離れていたからか、それとも元来の人柄からか、楽屋で兄さんに叱られた思い出はまったくない。いつもニコやかで物腰やわらかな先輩だった。

 この先輩は元がお医者さんだから「健康落語」なる新しいジャンルをこしらえた。ふつうのお医者さんが講演などで語る、生活習慣病や脳の老化、またはその予防について、落語にして語ろうという試みだ。

 でも、お医者さんから聞くお話というのは、生きていく上で大切だしタメにはなるけど、あんまり落語にはならない。お酒をやめてタバコをやめて、夜更かしをやめて早寝早起き、毎日のジョギングと週2回のフィットネスを欠かすことなく、健康的に長生きいたしました、めでたしめでたし。もちろん素晴らしい人生だけど、やっぱり落語にはなりません。

 人情噺の「芝浜」ですら、酒にだらしがなくて仕事にも行かず、女房を泣かせ続ける魚屋が、心を入れ替えて一生懸命働くからこそドラマになる。もともと酒にも博打(ばくち)にも女にも手を出さない聖人君子だったら、偉人伝にはなるけど落語にはならないのです。

 兄弟子のらく朝が「健康落語」で描いた登場人物は、やっぱり不健康だったり、自分の欲望に忠実に生きていたり、いたって落語的な人物ばかり。そういう人たちが繰り広げるドタバタを反面教師にして、人間の健康な暮らしについて語る。つまり落語家と医者という二つの目線でストーリーを語る、落語界でもただ一人のひとだった。

 その健康落語の中でも一番得意にしていたのが「禁煙ドック」という演目だ。ヘビースモーカーが奥さんに薦められて人間ドックに出掛けていく。タバコをやめる気なんてなかったが、お医者さんにさんざん脅かされて帰っていく。その脅かしようがすごくてバカバカしいのだけど、実は最後にどんでん返しを含んでいるという、ちょっとしたサスペンス作品にもなっている。

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