100周年でも時代の申し子 脱炭素、水害減災で“熱い”水力発電

長野県内で今年、大桑発電所(大桑村)が運転開始から100年、須原発電所(同)が来年100年を迎える。水力発電は、世界的に脱炭素の動きが加速するなかで再生可能エネルギーとして注目され、加えて、国内で近年多発する水害の減災面でも期待されている。(原田成樹)
歴史経て、なお期待
大桑発電所と須原発電所はともに木曽川沿いにあり上流から長い水路で導いた水を利用する水路式の水力発電所だ。大桑発電所の最大出力は1万2600キロワット、須原発電所の最大出力は1万800キロワット。国内で稼働中の原子力発電所が1基で100万キロワット前後であるのと比べると2桁小さい。
ともに、福沢諭吉の女婿の福沢桃介が大正8年から次々に木曽川沿いに建設した発電所の1つで、後に関西電力の所有となった。当時は木曽木材が水上運送から鉄道輸送に代わる時期で、林業や漁業などさまざまな利害関係者との調整を経て水力発電の歴史が紡がれてきた。
4月中旬に開かれた100周年記念式典で、関西電力の多田隆司・水力事業本部長は地元の関係者を含む招待者らを前に「水力発電は需要に応じて増減できる特徴を持っている。防災の面でも期待されている。皆さんと、私どもが果たせることが何か考えていきたい」と、将来に向けた決意を述べた。
既存ダムの有効活用
水力発電は、電力需要が少ない時間帯は止めて、必要な時に発電するなどピークシフトが可能。天候などに左右されやすい太陽光や風力などの自然エネルギーの調節弁的な役割を果たすことができ、貯水力を生かし洪水などを減らす役割も期待できる。