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【近ごろ都に流行るもの】「捨てられる花を100円で」 日常彩る規格外の愛おしさ

規格外の花を店先に並べ、1本100円で売る。ブックオフ自由が丘駅前店=東京都目黒区(重松明子撮影)
規格外の花を店先に並べ、1本100円で売る。ブックオフ自由が丘駅前店=東京都目黒区(重松明子撮影)
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 “世界に一つだけの花”の2~3割は、捨てられている。そんな切ない現実を変える、フラワーロス対策が共感を広げている。茎が曲がっている、細い…などの理由で廃棄されていた花を「チャンスフラワー」と名付け、1本100円で販売するイベント「花つみ」だ。東京都内の生花店が始め、リサイクル店大手が販売に参加したことで“救済率”もアップした。規格外とはいえ、生き生きと美しい花たち。その個性と多様性を尊重して命を大切にする試みは、地球の人々が今、最も大切にしたい価値観である。(重松明子)

 黄色いラッパ形の花が華やかなアルストロメリア、薄紅色が丸く重なるラナンキュラス、優雅なバラも…。午前11時、ブックオフ自由が丘駅前店(東京都目黒区)の店先に、11種類200本の花が並べられた。

 毎週火曜日と水曜日に花つみイベントを始めた同店。取材日の3月30日は2週目の開催日だ。「今週も売り切れないうちにカラー(白い仏炎苞の花)を狙ってきたの」。早々に来店した近所の主婦、高梨宜子さん(74)が、笑顔で手に取った。

 「花は大好きだけど、普通に買うと高いでしょ。こんなにきれいな花が100円なんてうれしい。安くても元気で、先週買った花もまだ咲いています。リビングにトイレにとあちこちに飾れて、気持ちがいいねと夫にも好評。地域の交番にも置かせてもらいたいから、今日は多めに買うわ」

 突然の取材にも快く応じてくれて、花が取り持つコミュニケーションの力を再確認した。同店で花つみ担当を務める福岡美佳さん(37)は「みなさん幸せな顔でレジに来られて、『きれいな色合わせですね』と会話も弾む。店先の幅1メートルほどのスペースですが、これほど空間と時間が豊かになるとは予想外でした」

 通りすがりの人が足を止め、新規誘客にもつながる。中古の本やDVD、ブランド品などを販売するブックオフでは、リデュース(廃棄物削減、商品寿命を伸ばす)の一環で「花の役目を全うさせたい」と、都内6店舗でチャンスフラワーの定期販売をスタート。全国約800店舗に広げることを目指し、徐々に販売店を増やすという。

 

 「花を切るとき。茎を見て、これは規格外だなってわかる。切ないよね」

 神奈川県厚木市のカーネーション農家、大貫亘さん(62)がこう打ち明けた。「捨てられる花を減らしたい」という東京・虎ノ門の生花店「hanane」代表、石動力さん(43)の思いに賛同し、花を卸している。

規格外の花を買い取り1本100円で販売する、「花つみ」を広げる石動力さん=東京都港区の「hanane」(重松明子撮影)
規格外の花を買い取り1本100円で販売する、「花つみ」を広げる石動力さん=東京都港区の「hanane」(重松明子撮影)
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 「花の色や茎の長さが偏ってもバラバラでもいいですよと、買い取ってくれる。花が生かされてお金にもなって、よいことばかりです」(大貫さん)

 石動さんは、花農家への聞き取り調査で廃棄率が2~3割にもなる現状を知り、平成29年から買い取りを始めた。規格外の花の出荷に対して「プライドが許さない」と断る農家もいたが「足を運ぶうちに、理解してくれる方が増えていった」と振り返る。

 現在、北海道から沖縄県まで全国73軒の花農家が参加し、集荷花数は直近の3月で5万1107本と前月から倍以上に伸びた。ブックオフだけでなく、カフェや美容院などの個人商店での販売も増えている。

 本拠地の虎ノ門では、毎週月曜と木曜に花つみを開催。近隣のビジネスウーマンらに定着しており、平均1人5~6本、多い日は1日150人超が花を求めて集まる。

 「目指しているのは、日常にお花がある生活」と語る石動さん。もともと「全く花に興味はなかった」というが、花との出合いが、歩むべき道を教えてくれた。

 やりたいことがなく、進学も就職もしなかった、高校卒業から3カ月後。地元・横浜駅ビルの生花店で「配達員募集・要普通免許」の求人を見つける。当時、唯一好きだったのが車の運転だ。飛び込んでみると、花を届ける仕事が楽しい。「先輩が作る花束を見て、自分も作れるようになりたいと思った」

 6年勤務した後、フラワーアレンジメントの修行でドイツに渡った。気軽に花を買って家路につく現地の人々の姿に感銘を受け、「日本でも、こんな景色を見たい」。その夢が原点となり、今に至る。

 花は、さまざまな恵みを人に与えてくれる。完璧ではない規格外も特別なオンリーワン。不器用な自分やあの人みたいで…、よりいとおしく感じられる。

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