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【ザ・インタビュー】人間の多面性、赤裸々に 松井玲奈さん新作『累々』

 テレビや舞台などで活躍しながら、執筆活動にも力を入れている俳優の松井玲奈さんの2作目となる小説『累々』は、発売前から話題を集め、重版が決まった。文芸誌「小説すばる」に連載された5つの物語を収録した新作のテーマは「人間の多面性」。恋愛や性愛をモチーフに、女性の多様かつ不穏な「顔」が浮かび上がる。

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 例えば、「パパ活」を扱った第3話は恋愛シミュレーションゲームを下地としたポップな作風だ。パパ活とは、女性が経済的な余裕のある男性とともに過ごし、その対価として金銭を得ること。着想を得たのは、ツイッターやインスタグラムで目にした「パパ活女子」のつぶやきだった。

 「女の子たちは洋服を着替えるように、相手の好みに合わせて、いろんな顔を巧みに使い分けている。本当の自分がどこにあるのか分かりづらく、それがとても興味深かった」

 「セフレ」(セックスフレンド)を取り上げた第2話は、去勢手術をするたびに、自分の局部を切り取られる夢をみる獣医の男が主人公。関係に進展のない女性に向けた不器用な情愛が痛々しい。

 恋にのめりこむ若い女性の心情をきめ細かに紡いだ第4話は作品集の要となるストーリー。「読者が何を感じたかによって、作品全体の評価が変わるかもしれないことを意識した」と口にする。

 松井さんは以前から人間の多面性を深く自覚し、作品にしたかったという。

 「自分自身が表に出ているからこそ、パブリックイメージと、本当の自分との違いを意識してきました。この場面ではこういう顔を見せなければならないとか、自分の中にあるサイコロを転がしているような感覚があって…」と振り返る。その上で新作に込めた思いをこう語る。

 「一つの面でも抜けてしまえば、自分が自分でなくなってしまうし、こちらの面を見せているつもりでも、別の面を見透かされてしまうこともある。前作は『人間には他人に見せない一面がある』ことをテーマにしましたが、今回はより深く人間の面白さを描けたと思います」

 多面的な自分の中で、本当の自分はどれなのか、自分とは何者なのか…。執筆は自らを探り出すことにつながっていった。

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 幼いころから読書好きで、俳優業の傍ら、書評やエッセーを書く機会にも恵まれてきた。数年前、ファンクラブの会報誌にショートショートを書いたのが、フィクションを手掛けるきっかけとなった。

 「お芝居はすでにある『1』を『100』までもっていく仕事。一方、執筆は『0』から『1』を生み出さなければならない。それを経験してみて、こんなに難しいのかという発見があった。台本に対する向き合い方が変わり、今まで以上に、脚本家や監督へのリスペクトを感じるようになりました」

 作品集を通して描写が映像的なところも特徴だ。

 「書いているときは、頭のなかに箱庭や小さなジオラマがあって、その中にカメラがあり、どう登場人物が動くのかを客観的に見ている感覚がある」と説明する。

 話題作を放った松井さんの次なるテーマは何か。

 「憧れの作家はたくさんいて、それぞれのスタイルを自分の中に取り入れて書いてみたこともありましたが、ことごとくうまくいきませんでした。書くなら、自分のスタイルで。今回は重いテーマを扱ったから、次作は楽しい作品を書いてみたい」

3つのQ

Q最近読んで面白かった本は?

幡野広志さんの『なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)。お悩み相談をまとめたものですが、いい本でした

Q冬によくする料理は?

豚肉と白菜のミルフィーユ鍋。ウニの香りがするスープがおすすめです

Qコロナ禍が収束したら行きたい場所は

渡航する予定があったのにコロナでかなわなかった英国。友人に会いに行きたい

(文化部 篠原那美)

 まつい・れな 平成3年生まれ、愛知県豊橋市出身。役者・作家。出演作品にNHK連続テレビ小説「エール」や「まんぷく」など多数。著書に『カモフラージュ』(集英社)。

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