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【石仏は語る】鎌倉中期 薄い肉彫り 洞の地蔵石仏 奈良市

洞の地蔵菩薩
洞の地蔵菩薩
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 春日大社の神苑から、若草山と春日山の谷間を流れる水谷川(みやがわ)を遡(さかのぼ)ると、「天然記念物春日山原始林」の石標があります。さらに登ると、楓(かえで)木立の山側斜面に石仏があります。近くには仏頭石があり、その南西側に横たわっており、「洞(ほら)の地蔵」と称されてきました。

 地蔵菩薩の石仏は建てられて、祀(まつ)られていたようです。この地で産出する安山岩製の石材「カナンボ石」と称する板状自然石を使っています。その平らな部分に地蔵菩薩立像を薄く肉彫りしており、石材が硬いこともあって、凹凸の変化に見る迫力に、欠けるところがあります。

 その石材の長さは約135センチ、最大幅約57センチ、厚さ約20センチを測ります。像高は約77センチ。美しい円形の頭光背(ずこうはい)、身光背(しんこうはい)を負う、蓮華(れんげ)座上の立像です。その蓮華座は、立体感をもたせるように、蓮弁が自然な反花状に開いている様子がうかがえます。

 地蔵菩薩は、右手に錫杖(しゃくじょう)を強く握り締めて大地を突き刺し、その錫頭部の遊輪は大きく、六つの小輪を線刻表現しています。左手の親指と二指を結び、大ぶりな宝珠を添えているという姿であり、胸元に瓔珞(ようらく、珠玉を連ねた装身具)が表現されます。

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 面相はやや面長で、大胆な目鼻立ちが温雅な彫りですが、鋭い眼光は浅く彫り沈められて、厳しさが見られます。衲衣(のうえ、僧衣)紋の表現は写実的であり、肩幅は広く、その指先、足先の細部表現に繊細さと力強い生き生きとした迫力があります。全体的には粗野な修行者風に感じられます。

 像容右側の身光背部分に「建長六(1254)年八月日」、左側は光背外側に「勧人多聞丸」とあり、銘文は比較的大きく陰刻されています。「勧人」とは勧進者の意と考えられ、鎌倉時代中期の紀年銘は、資料的価値を高めています。

(地域歴史民俗考古研究所所長・辻尾榮市)

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