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細胞認識AIが古文書も解読 新雑誌「REKIHAKU」が伝える歴史研究最前線

国立歴史民俗博物館が新創刊した雑誌「REKIHAKU」(左)。リニューアル前の旧誌(右)よりも分厚く、内容も充実した
国立歴史民俗博物館が新創刊した雑誌「REKIHAKU」(左)。リニューアル前の旧誌(右)よりも分厚く、内容も充実した

 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)が新たな歴史雑誌「REKIHAKU」を創刊した。古文書解読に医学用AIが応用されている最新研究や伝説の皇后がお札の肖像画に起用された秘話など歴史トリビアが満載の定期雑誌だ。近年ささやかれる“文系不要論”を背景に、歴史学の存在意義を見つめ直そうとする研究者らの危機感も行間ににじむ。(文化部 篠原那美)

プロ編集者がダメだし

 創刊号では、同館が取り組む最新研究が数多く紹介された。興味深いのは、理系を含む他分野との連携が進んでいること。例えば、歴史研究に欠かせない古文書のくずし字を認識するシステムが開発され、そこには生物医学で細胞や臓器の画像認識に用いられるAI(人工知能)技術が応用されているという。

 「これまでも研究成果を紹介する雑誌を発行してきましたが、薄い冊子で、読んだらすぐに捨てられるような状況でした」

 そう振り返るのは、同館教授で「REKIHAKU」編集長の山田慎也さん。

 昨年10月に創刊号が出たばかりの「REKIHAKU」は、平成7年から同館が発行してきた前身の歴史総合誌「歴博」をリニューアルしたもの。主に博物館の友の会会員や行政、研究機関に配られていたが、研究者がローテーションで書く特集記事は文体が硬く、アンケートでは「難しい」という声が数多く寄せられていた。

 読まれる雑誌にするためにはどうしたらいいか-。29年から始まった雑誌のリニューアルプロジェクトでは、デザインや言葉使いを刷新するため、出版社の協力を仰いだ。

 プロの編集者が加わることで、研究者同士なら通じるけれど、一般読者には分からない表現などがそぎ落されていったという。

 「研究者では思いつかないような大胆なキャッチフレーズの提案もあり、互いの思いをすり合わせながら編集作業をすすめてきました」(山田さん)

トリビアも充実

 創刊号の表紙を飾った特集タイトルは「されど歴史」。先の見通せない時代だからこそ、歴史が役に立つ。そんな研究者らの矜持(きょうじ)が込められている。

 教科書に載らない歴史のこぼれ話も充実している。今回取り上げられたのは、古代神話に登場する神功(じんぐう)皇后のエピソードだ。

 臨月にもかかわらず、急死した夫の仲哀天皇に代わり朝鮮半島を討伐した伝承がある神功皇后。明治政府も国民統合のシンボルとして日本初の肖像画入り紙幣に採用したが、日露戦争後には大元帥としての天皇像が強調されていき、女性が天皇であることはふさわしくないという評価に移り変わっていく。

 屏風絵などの博物館の収蔵品を、女性お笑い芸人が独自の視点でユーモラスに紹介する連載は編集者一押しのコーナー。定期購読につながる人気コンテンツになってほしいと期待が寄せられている。

「文系不要」に待った

 ただ、リニューアルの必要性を迫られた背景には、内容の硬直化もさることながら、文系学問に向けられた、当時の厳しい世間のムードがあったという。

 約5年前の27年6月、国立大学改革を進めていた文部科学省が各大学に、文系・教員養成系の学部・大学院の廃止を含む見直し要請を通知したことが話題となった。

 通知は企業での理系人材需要の高まりや少子化に伴う教員の先細り傾向を背景に出されたものだったが、“文系不要論”が沸き起こり、波紋が広がった。

 「当時、人文科学が社会的に必要ないという認識が広がる中、歴史、文化の必要性とその研究成果をどのように分かりやすく発信していくかは、博物館にとっても重要な課題となった」と山田さんは話す。

 2月下旬発売予定の次号のタイトルは「いまこそ、東アジア交流史」。

 「歴史を学ぶことは、時代を相対化して物事をみる力になる。今の『当たり前』を乗り越え、豊かな未来を創っていく判断材料の一つにしてもらえたら」と山田さんは語る。

 インターネット通販や大手書店などで購入可能。1200円(税込み)。

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