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ATMで電波遮断、AIが通話警告…コロナ禍でも止まぬ特殊詐欺被害、根絶に「水際対策」強化

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 孫や親族のトラブル、自治体からの還付金、架空請求…巧妙な嘘で高齢者らから現金をだまし取る特殊詐欺。捜査による犯行グループの実態解明が容易ではない中、警察当局や関係機関が力を入れているのが、ATM(現金自動預払機)での携帯電話の電波遮断や人工知能(AI)を活用した通話への注意喚起といった「水際対策」だ。新型コロナウイルス禍の昨年も、全国の被害額は上半期で100億円を優に超える。警察幹部は「あらゆる手で被害を封じ込める」と力を込める。(千葉元)

ATMで「電波遮断」

 「区からの還付金が受け取れますよ」。今年1月、東京23区内にある高齢者宅に、区職員を装った男から電話がかかってきた。

 「キャッシュカードを持ってATMに向かってください」「着いたら手続きの方法を教えますよ」。男から電話口でせかすように畳みかけられ、この高齢者は男から言われるまま、自宅を出て近所のATMに向かった。

 ATMに到着し、電話でさらなる指示を受けようと通知された電話に何度も掛け直したが、突然、電波が「圏外」に。焦ってATMのインターフォンで銀行職員に問い合わせたところ、職員から「それは詐欺ですよ」と諭され、被害を免れた-。

 警視庁は昨年10月、全国に先駆けて都内5カ所のATMに携帯電話の電波妨害機器を試験的に設置。捜査関係者によると、実際、冒頭のように還付金詐欺被害を未然に防止できたケースが確認されているという。

1日で平均年収20倍

 警察庁によると、令和元年の特殊詐欺の被害総額は約315億円。新型コロナの感染が全国的に拡大した昨年も、1~6月で約128億円にのぼる。

 1日当たりの平均被害額は約7000万~8600万円。サラリーマンの平均年収の20倍ほどの現金が、高齢者らから毎日吸い取られている計算で、警察幹部は「穏やかに老後を過ごそうとするお年寄りらの生活をどん底に陥れる卑劣な犯罪」と憤る。

 警察も手をこまねいているわけではなく、影響力のある芸能人らを起用した啓発活動を展開したり、高齢者宅に注意を促す訪問などを繰り返し実施。犯人側が集中的にだましの電話をかけているエリアを専用アプリなどを使って瞬時に伝え、注意喚起を行っている例もある。

 こうした効果は数字にも表れ、年間の被害額は、平成26年のピーク時の約565億円から大きく減少してはいる。ただ、登場人物が入れ替わり登場する「劇場型」と呼ばれる手口に代表される詐欺グループの手練手管にはまる高齢者は後を絶たない。

 捜査により犯行グループを摘発しようにも、詐欺グループは現金受け取り役の「受け子」や現金を引き出す「出し子」、電話をかける「架け子」、全体を統括する「番頭」、グループを金銭的に支援し犯罪収益を吸い上げる「金主」など複雑に役割が分かれており、全容解明は困難なのが現状だ。

AIが「注意喚起」

 こうした状況を受けて、関係者が「打開策」として注目しているのが、冒頭で紹介したATMの電波遮断のような、ハード面での根本的な水際対策だ。

 通信事業者も対応を加速させている。たとえばNTTが開発した固定電話に取り付ける「特殊詐欺対策アダプタ」。通話内容をリアルタイムでAIが解析し、《振り込み》《口座》などのキーワードから詐欺電話だと判断すれば、利用者があらかじめ登録した家族や友人にメールに《電話は詐欺の可能性があります》という警告メッセージが送信される仕組みだ。

 警察幹部は「一般の方が詐欺電話を受けている人に気付いて声をかけ、防げた例もあり、意識の高まりを感じる。関係機関と連携し、引き続き手を打っていく」と話している。

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