予備も収納できるマスクケースは子供に優しい上履き生地

シューズメーカーの下請けとして子供向けの上履きを製造する縫製会社「樫原工業」(香川県さぬき市)が、丈夫な上履きの生地で作った自社ブランドのマスクケースなどを商品化した。1日数千足を仕上げる技術力を生かし、学校で使うことを想定したデザイン。社長の樫原拓史(ひろし)さん(36)や職人らの「親しみのある生地を用いた商品を子供たちに使ってもらいたい」との思いが込められている。
少子化にコロナ禍が追い打ち
業務用ミシンが並ぶ樫原工業の工場では、職人が次々と上履きのパーツを縫い合わせていく。ここで働く職人と内職の40人近くが縫製に携わっており、3代目社長の樫原さんは「1日に2500足を作ることができる」と説明する。
同社は当初手袋の縫製をしていたが、シューズメーカーから依頼があり、上履きの靴底を除いた部分の縫製を手がけることに。以来40年以上にわたり、丈夫さと正確な技術で、成長期の子供の足を包む上履きを作り続けてきた。
ただ、少子化で子供の数が減り、上履きの需要はかつてに比べて落ち込んだ。さらに、新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけた。昨年は学校が休校になった影響でメーカーからの仕事が減り、県内の手袋メーカーからマスクの縫製を請け負うこともあった。
技術生かして開発
厳しい状況の中、樫原さんは自社の技術を生かしてできることはないか模索。知人の「上履きの生地で何か作ってみては」という提案をヒントにグッズの製造を検討し、感染予防として日常生活に欠かせなくなったマスクを入れるケースを作ろうと考えた。「(先代の)父親の『これからは工賃を得るだけではなく自分で商品を生み出さなければいけない』という言葉も大きかった」と思い返す。
昨年7月から試作に着手。子育て中の従業員らに意見を聞き、使いやすいようにデザインや構造に改良を加えていった。
こうして完成したマスクケースは、2つ折りで、外したマスクと予備のマスクの2枚を収納できる。内部には菌が増えるのを防ぐ制菌加工の生地を使用。ケースの下部には、上履きのかかと部分と同じ曲線のステッチをあしらった。上部には、履き口のかかと部分にある「つまみ」もつけた。
「学校生活で使って」