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「福沢先生のおかげ」?資金目標の8倍超…コロナ禍で危機の慶応大食堂「山食」に支援結集

クラウドファンディングに挑戦した「山食」の谷村忠雄代表=東京・三田の慶應義塾大学三田キャンパス内の「山食」(蔭山実撮影)
クラウドファンディングに挑戦した「山食」の谷村忠雄代表=東京・三田の慶應義塾大学三田キャンパス内の「山食」(蔭山実撮影)

 慶応義塾大学の三田キャンパス(東京・三田)で創業84年の歴史を誇る食堂「山食」。コロナ禍による深刻な経営危機を乗り越えようと、運転資金確保に向けてクラウドファンディング(CF)に挑んだところ、昨年12月中旬の開始から1カ月余りで目標500万円の8倍以上となる4000万円超が集まった(1月25日現在)。慶應義塾には「社中協力」という結束の理念があるが、「思い出の食堂を守りたい」と、支援に動いた卒業生ら関係者の熱い思いがうかがえる。

売り上げ80%減

 「このままでは存続は難しいと判断し、クラウドファンディングに挑戦することにしました。歴史が途絶えてしまうのはあまりにもさびしい」。「山食」代表の谷村忠雄さんはクラウドファンディングを始めた際、閑散とした食堂でこう話していた。

 コロナ禍で大学の授業もオンラインが主流となり、伝統ある人気食堂も学生や教員らの利用は大幅に減った。卒業生も懐かしい味を求めて、折に触れて訪れるが、大学構内への入場が厳しくなると、どこか足も遠のいてしまう。三田キャンパスでは、正門で検温と入場者の肩書や連絡先を提示することになっている。

 谷村代表によると、売り上げは昨年比で80%も減少した。「歴史と伝統を守りながら、『第二の家庭』でありたい。価格を抑えることで学生らにたくさん食べてもらう薄利多売が経営方針」。それだけに利用者激減の打撃は大きい。年間で70件近くあったパーティーもなくなってしまった。

「福沢先生のおかげ」

 そのため、長い歴史にあって戦争も乗り越えてきた「山食」も創業以来最大の経営危機に直面し、その存続を図るため、対策を講じることになった。そこで慶應義塾側に相談したところ、クラウドファンディングという方法もあると知り、社内で検討して挑戦することに決めたという。

 この情報を卒業生らが知るや、SNSで一気に広まり、支援が相次いだ。集まった金額は開始から数日で目標を大きく上回り、谷村代表は「福沢先生の力のおかげですね。慶應義塾の方々は本当に結束力がある」と感謝するのみだった。

 「山食」は慶應義塾のスポーツ活動を担う三田体育会もさまざまな形で支援してきた。大学の野球部は秋のシーズンが終わると「山食」で納会を行う。それも昨秋は見送られたが、OBはいまも訪れる。「往年のOBの方にはちょくちょく来ていただいています。きのうも来られましたよ」。谷村代表は厨房近くの壁に張られたOBとの記念写真を見ながら話していた。

 1月に入って再び緊急事態宣言が出され、キャンパス内のレストランは営業時間の短縮や臨時休業を余儀なくされる事態となっている。「山食」もさらに厳しい状況に陥ることになったが、消毒や座席の制限など、徹底した感染拡大予防対策を講じたうえで伝統の灯を保っている。

カレーライスの「源流」

 「山食」は昭和12(1937)年の創業だが、その名が定着したのは戦後といわれる。由来には諸説あるが、三田キャンパスのある地域は「三田の山」や「丘の上」といわれるが、「山の上の食堂」を縮めて「山食」となったというのが有力だ。伝統のメニューは創業当時から変わらない味を守っているカレーライスで、慶應義塾で学び教えた人々には思い出の味として親しまれている。

 慶應義塾の創設者、福沢諭吉は「食」への関心も高かった。英語の「Curry」を現在の「カレー」の元となる「コルリ」として日本で初めて紹介したのも福沢だった。「山食」は日本のカレーライスという名の源流にある味をいまに伝えているといえる。

 クラウドファンディングは27日で終了する。支援者はすでに3800人を超えた。支援者には、名物のカレーのレトルトパックやカレー皿などが提供される。

(文化部 蔭山実)

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