優良店もクラスター、酔いで注意力散漫に…難しい「夜の街」の感染防止、店と客双方が努力を
対策にも落とし穴
店側がとっている感染対策が、実際には有効ではなかった事例も見つかった。
調査店舗の多くは、5月初旬から感染症対策の強化に努めていた。従業員のマスク着用や検温、客への手指消毒・体温測定も実施。客数は制限して店内も頻繁に消毒し、回し飲みの自粛や、換気対策も行っていたという。
だが、例えば手指消毒では、本来なら入店前だけでなくテーブルから離れて再び席につくたびに消毒をする必要があるが、それが徹底されていない従業員も多かった。
テーブルの消毒で次亜塩素酸水を使っている場合も、厚生労働省などは「汚れを落とした後に表面をぬらし、20秒程度時間を置いてから布で拭く」ことを奨励しているが、実際にはアルコール液のように、さっと吹きかけて拭くだけの店もあった。
さらに悩ましいのは換気だ。そもそも接待を伴う飲食店は、風営法上で「客室の内部が外部から容易に見通すことができないもの」にするよう求められている。換気のために窓を開けることが構造的に難しいという事情もある。
「しらふであれば感染対策ができている人も、酔ってしまえばマスクの着用をはじめ対策が甘くなり、感染リスクが高まることが改めて分かった」。今回の調査結果について、感染研の担当者はこう話し、店を訪れる客に対し、店内でのマスクの率先着用を求めるメッセージを発信する予定だと明かした。
店側に対しても、「窓が開けられなくても換気扇やサーキュレーターを店舗の入り口に置くだけでも換気が改善される」として、さらに徹底した感染防止対策を求めていくという。
経済を回しながら感染を抑えるには、店と客双方の努力が不可欠。感染拡大の第3波が続く中、「夜の街」の教訓は、それ以外の飲食店などにも当てはまるといえそうだ。