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【一聞百見】現代美術家が語る「核」「社会」「作品」 ヤノベケンジさん 

万博跡地で遊んだ少年時代を振り返るヤノベさん。原体験を作品に投影してきた=京都市左京区の京都芸術大(渡辺恭晃撮影)
万博跡地で遊んだ少年時代を振り返るヤノベさん。原体験を作品に投影してきた=京都市左京区の京都芸術大(渡辺恭晃撮影)
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 約50年前、大阪万博で見た未来をいまの私たちは現実に生きている。ヤノベケンジさんは万博体験、いや万博後体験を作品に強く投影してきた。熱狂が過ぎたあとの会場跡地「未来の廃虚」が、少年時代の遊び場だった。ひとりの芸術家にあの万博がどうとりついたのか、聞いてみたかった。

(聞き手 坂本英彰・編集委員)

万博後体験 作品に強く投影

 「岡本太郎がデザインした太陽の塔は、未来志向にあらがうかのような巨大な土偶でした。丹下健三が設計した大屋根を、ぶち破るように立っていたのです」

 ヤノベさんは万博のシンボル、太陽の塔を「土偶」だと表現した。いまは「ひとり」ぽつんと立つ太陽の塔だが、開催中は大屋根に囲まれ、周囲にはパビリオン群があった。未来があふれかえった万博の跡地にいま、太古の「土偶」が生き残っているのは不思議だ。

 「パビリオンの日本館が鉄球で破壊され、大屋根の下のお祭り広場に巨大ロボットの『デメ』が放置されているのを見ました」

 万博当時は4歳で八尾市に住み、会場を訪れた記憶は曖昧だという。鮮明なのは会場から自転車で15分の茨木市内に引っ越し、跡地を遊び場にした小学生時代だ。父が買い求めた万博の写真集を見つめ、未来に夢をはせる少年だった。

 京都市立芸大院生のときに「タンキング・マシーン」を発表し、第1回キリンプラザ大阪コンテンポラリー・アワードで最優秀作品賞を受賞した。

タンキング・マシーンについて説明するヤノベさん=平成28年、高松市美術館(前川康二撮影)
タンキング・マシーンについて説明するヤノベさん=平成28年、高松市美術館(前川康二撮影)
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 4本足の球体タンクで、体温ほどに温めた生理食塩水が注入されていた。直径2・4メートルあり、中に入って人が浮かぶことができる。時空を超えるタイムマシンならぬ、瞑想(めいそう)によってどこへでも行くことができる装置だ。

 「母体内で羊水に浮かぶような体験をすれば、何が見えるのかと考えたのです。脳みそが解放される気分を味わえますよ。万博には、人間洗濯機という展示がありましたよね」

 指摘したのは、長さ2メートルほどのタマゴ型カプセルで、自動で体を洗い乾燥もしてくれる便利な装置だ。万博での実演には大変な人だかりができたという。

 究極の便利を求めた人間洗濯機と違い、タンキング・マシーンは何もしてくれない。ガスマスクのような顔はむしろ、時間節約に励む人間たちをあざ笑うかのようだ。

(次ページは)深刻なこと深刻に語らない…

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